2018年CFB注目選手 vol.20 ウエストヴァージニア大 WR デイヴィッド・シルズ

2018年11月19日
以前登場した剛腕QBウィル・グリアーが最も頼りにしている「恋女房」について今回はお話させて頂きます。華麗なプレイぶりだけでなく、その生き様においても皆さん惹かれること請け合いです。

ウエストヴァージニア大マウンテニアーズ四年生WRデイヴィッド・シルズは、グリアーの台頭と共に各方面から注目を集めつつあります。まずはブレイクの契機となった2017年シーズンのハイライトを御覧下さい。
193cmの恵まれたフレームに頼る事なく、アジリティとリリース技術そして守備を読み取る能力の高さで勝負出来るのがシルズの最大の特長であります。御覧のパフォーマンスを発揮した2017年シーズンはFBSでトップのTDキャッチ数をマーク、そしてオールアメリカンの一軍に選出されました。来年のNFLドラフトにおいても、かなり高い評価を受けるのは間違いないでしょう。



2018年シーズン ハイライト

それでは、2018年シーズンのプレイぶりを追ってみましょう。

対テネシー大戦

グリアーの時にも紹介させて頂いたテネシー大戦では、1捕球あたり何と20ヤードの獲得という「猛打賞」ならぬ「猛捕賞」のパフォーマンスを披露しました。



対カンザス州立大戦

ゲームを通してグリアーの調子にムラがあったカンザス州立大戦でしたが、そこをシルズ始めレシーバー陣が上手くリードしていました。特に9:38頃のゴール前におけるフェイドルートのリリースなど、もはや芸術の域に達しています。



対ベイラー大戦

Source : David Sills Vs Baylor on YouTube

 

5捕球の139ヤードに2TD獲得という安定した数字をマークしました。ひとつシルズに難癖をつけるとすれば、守備バックに対し優位な状態を創出して捕球するプレイスタイルなので、何が何でもボールに喰らいつくというタイプではありません。パスのリードが若干キツかったり低い場所にボールが飛んできた時にドロップしてしまう場合がやや見られ、こちらのゲームではそのウィークポイントも確認する事が出来ます。



対テキサス大戦

テキサス大が最初のTDを奪った直後にシルズがTDキャッチで「返礼」して、ウエストヴァージニア大は逆襲の狼煙を上げました。その後もテキサス大がTDを取り返すと、またさらにシルズがTDキャッチ…といった具合に壮絶な撃ち合いとなりましたが、2018年シーズンCFBのベストバウトのひとつに数え上げられるこのゲームに彼のプレイが華を添えています。


この2シーズンの様子を通して、QBであるグリアーの欲するタイミングとポイントを察知しながらシルズがルート取りをしているように感じられたのではないでしょうか。その点に関しては、彼が歩んできたキャリアを御覧になれば納得をして頂けるかと思います。



演歌…ならぬフットボールの花道 -波乱万丈のキャリア-

実を言うと、シルズが元来「出世」を志していたのはQBのポジション。恵まれた体格に加えて幼少期からQBのコーチから個別指導を受けていた事もあり、ちょっとした逸材として全米レベルで注目を集めていました。

Source : David Sills Verbally Commits to USC on YouTube

 

USCこと南カリフォルニア大のHCを当時務めていたレイン・キフィンがまだ中学生のシルズに奨学金のオファーを約束していたくらいで、それを受けてシルズ自身もUSCに進む事を高らかに宣言していました。



次にハイスクール時代のシルズのプレイぶりを覗いてみましょう。
順風満帆なキャリアを送るかと思いきや、USCのキフィンHC解任によってシルズの進路はガラリと変わる事になります。USCはシルズと同学年のQB二人に奨学金をオファーしたため、結局シルズは同大への進学を諦めてしまいました。ちなみにその同学年QBの一人は、度々Dr.FOOTBALLに登場している現ニューヨーク・ジェッツの先発QBサム・ダーノルドであります。


そんな傷心のシルズに手を差し伸べたのがウエストヴァージニア大でした。シルズはCFBでの活躍を期してワークアウトに励みます。

Source : Trendsetter Spotlight: David Sills on YouTube

 

ここでシルズの投げ方に注目してみると、ボールを内側に巻いて振りかぶるため、肘を支点にする「ダーツ投げ」となっている事が分かります。このスローイングとなると文字通りダーツのようにある程度コントロールを効かせられるのですが、下腕のみの短い「テコ」でボールを飛ばしているためパスの勢いはイマイチ伸びません。「エリートパサー」と呼ばれるような選手がゴロゴロしている世界からすると、シルズが見劣りしてしまうのは仕方なかったような気がします。

ウエストヴァージニア大に入学したシルズは現オービック・シーガルズ所属のスカイラー・ハワード等との先発争いに加わるものの、コーチからWRへのコンバートを打診される事に。そういった経緯で一年生と二年生のシーズンはWRとして過ごしましたが、シルズの中ではメジャーカレッジでQBとしてプレイする夢を捨て切れなかったようです。



一念発起したシルズは三年生のシーズンを迎える前にロサンゼルスのエルカミノ短大への転校を表明。そこでQBとしての実績を残してメジャーカレッジへQBとしてカムバックするという「夢」を実現しようとしました。こちらはその当時の練習風景になります。
やはり大学からガッツリ予算が出るメジャーカレッジと異なり、各々自前の練習着やフィールドの規模などを見ると我が国の大学チームの状況とあまり変わらない感じですね。

エルカミノ短大での2016年シーズンにてシルズは1636ヤードを投げて15TDを獲得する成績を残しましたが、QBよりもWRとしての可能性を見出したのか2017年シーズンにはウエストヴァージニア大に復学。そこでCFBを席巻するコンビの「相方」となるグリアーと2017年シーズンに邂逅、現在に至るという訳です。



同じ攻撃のスキルポジションのコンバートでありますが、野球の投手から捕手へのそれに近い難儀を伴うものである事を御理解頂きたいと思います。次はこちらのWRとしてのドリル風景を御覧下さい。

Source : Trendsetter Spotlight: David Sills on YouTube

 

シルズが元々WRとしての素養を持っていたというのもありますが、このようにイチから技術習得に取り組んできた事も彼の「サクセスロード」において無視は出来ません。



幼少時に天才ともてはやされながらプロデビュー後は鳴かず飛ばずだった歌手が、心機一転とばかりにガラリと音楽の方向性を変えるや否や大ヒットして紅白歌合戦に出場するという、演歌的なノリに近いシルズのストーリーは何だか日本人の心をくすぐるものがあります。

シルズの「フットボールの花道」はNFLに進んだとしてもさらに続くはずです。引き続き彼を見守っていきたいと思います。




[了]

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