2018年シーズン NFC決勝 展望

2019年1月19日
前回に続くカンファレンス決勝の展望、今回はロサンゼルス・ラムズとニューオリンズ・セインツの対戦となるNFC決勝戦の方についてお話させて頂きます。



NFC決勝 ロサンゼルス・ラムズ vs ニューオリンズ・セインツ スキーム比較

こちらもAFC同様、レギュラーシーズンに対戦しています。まずはその第9週のゲームを復習してみましょう。
スコア的に2ポゼッション差となった結果が象徴しているように、このゲームではセインツが主導権を握っていたような印象を受けますね。





今度は前週のディヴィジョナルラウンドにおける両チームの戦いぶりにも注目したいと思います。

まずはラムズの対ダラス・カウボーイズ戦を御覧ください
ラムズ攻撃の基本線は、強力な攻撃ラインを背景としたボールコントロール。大黒柱のエースRBトッド・ガーリーのランと若きプリンスQBジャレッド・ゴフのプレイアクションパスのコンボは成熟の域に達しています。WR陣もクーパー・カップ、ブランディン・クックス、ロバート・ウッズと粒が揃っていますが、ゴフ一番の「恋女房」であるカップが負傷でシーズンエンドとなってから、若干パスの効率が下がっているのが気がかりなトコロ。

守備に関しては、恐ろしい運動量を誇るDTアーロン・ドナルドを中心とした守備フロントで相手攻撃に圧力をかけるスタイル。LB&DB陣はパスカバーの際に思い切り後方へ下がる傾向があり、ブリッツが入る際のマンツーマンカバーでもレシーバーとの間を空けているシーンが散見されます。この守り方では相手攻撃にアンダーニース(浅いゾーン)のパスをバシバシ決められてしまいますが、長いパスによる短時間での一発TDを防ぐのは勿論、パスであってもインバウンズで走らせるため相手チームにも時間消費を強いる効果を狙っているのかも知れません。攻守でボールコントロールを意識しているのであれば、相当秀逸なチーム戦略と言って良いでしょう。



続いてセインツの対フィラデルフィア・イーグルス戦をどうぞ。
セインツ攻撃もランプレイをゲインさせるという方針はラムズと共通していますが、大きく異なるのがその方法論。先日不惑を迎えた先発QBドリュー・ブリーズが投げまくって相手守備ユニットをフィールド全体に広げ、その空いたスペースにアルヴィン・カメーラとマーク・イングラムのハイパーRBデュオを走らせるのがセインツ流です。また、レシーバーの位置からセットしてパスルートにリリース出来るカメーラの存在は、WRの層がそれほど厚くない現在のセインツにおいてその重要性を増しています。もう一人の攻撃の鍵を握る選手は「曲者(くせもの)」テイサム・ヒル。元来はQB登録ですが、攻撃のあらゆるスキルポジションをこなすだけでなく、キッキングゲームにおいてもその活躍の場を見出しています。彼がハドルの中にいるだけで相手守備は様々な注意を払わなければならなくなるでしょう。

※学生時代のテイサム・ヒルについてはコチラを参照下さい。

 

 

守備の方に目を向けるとラムズと対照的で、ボールキャリアーへの集まりが良いバランス重視の守備を敷いているように感じられます。今シーズンにおいても、攻撃が停滞した際に守備が要所を止めた事によって勝利を得たゲームが見られました。注目選手を挙げるとすれば、若手CBのマーション・ラティモア。前週のイーグルス戦でも2つのインターセプト(ひとつはアルション・ジェフリーのドロップによるごっつあんでありましたが…)を決めるプレイメイカーぶりを発揮、特にマンカバーにおけるWRとの競り合いには絶大な強さを発揮しています。




「Xファクター」そして勝者予想 

直接対決と前週のゲームを比較すれば両チームのスキームがそれほど変化していないのは御理解頂けるかと思いますが、このカンファレンス決勝に際してラムズには「Xファクター」が加わっている事を述べておく必要があります。


守備面に関していうと、第9週のゲームには負傷欠場していたスーパーボウル優勝経験のあるベテランCBアキーブ・タリーブが復帰している点。恐らくセインツのエースWRマイケル・トーマスとマッチアップするのはタリーブになるかと。タリーブによるインターフェア上等のしつこいカバーによって、「我」の強い性質を持つトーマスの集中力を削ぐ効果が期待出来るように思います。そうすれば、もう一人のプレミアムCBマーカス・ピータースがビッグプレイを発揮する可能性も大きくなるでしょうからね。この2018年シーズンに臨む際の両CBの大型補強は「ビンゴ」だったように感じます。

ラムズが有する攻撃面での「Xファクター」は、オークランド・レイダースから2018年10月に解雇されてから同12月にラムズと契約するまで「無職」だったC.J. アンダーソン。第50回スーパーボウルにてペイトン・マンニングのパスが殆ど機能していなかったにも関わらず、独り気を吐きデンヴァー・ブロンコスを勝利に導いた突貫RBです。ほとんど身体が消耗していない事も手伝って加入後から前週のディヴィジョナルラウンドまで激走を披露、タイプが異なる大黒柱ガーリーとの「即席デュオ」はラムズのボールコントロールをより強固なものにしています。もちろん彼も第9週のゲームに出場していないため、セインツが彼の力量を推し計るのを難しくする効果も創出するでしょう。カップのシーズンエンドと差し引いても、お釣りが出るくらいの攻撃力アップをラムズにもたらしているといって良いかも知れません。どのチームにも属していないFA選手であればポストシーズンでも契約出来てしまうルールは、このようなNFLならではの「戦術」を生み出しています。


一方のセインツについては良くも悪くも面子が変わっていない状態。攻撃に関してはショーン・ペイトンHCが大一番用のプレイを準備している事と思われますが、基軸プレイの内容に関しては殆ど変わらないでしょう。これに対してラムズ守備は対策が練り易く、その上「罠」のようなパッケージも準備出来る事かと思います。そして守備陣はラムズの新生RBデュオを警戒するのは間違いなく、「アンダーソン・シフト」的な前陣強調隊形を多用するのではないかと予想されます。ただし攻撃のブロックを受けないフリーのタックラーが多くてもアンダーソンが一人一人を弾き飛ばしてしまえばただの「ダミー」を並べているのと何ら変わらない訳で、かつ戦術的にもプレイアクションパスの効果が発揮してラムズのボールコントロールを助長する事に繋がるはずです。

もしラムズが前半で1ポゼッション差でもリードする展開となれば、スーパーボウル進出確率がグンと跳ね上がると個人的には二ラんでいます。





筆者の勝者予想:ロサンゼルス・ラムズ






それでは最後に、「Xファクター」がゲームのブレイクポイントを担ったニューイングランド・ペイトリオッツとグリーンベイ・パッカーズによる第31回スーパーボウルを御覧になってお別れしたいと思います。それにしても、ブレット・ファーヴが若いですねー
ゲームの出鼻にファーブのTDパスをキャッチしたWRアンドレ・ライゾン、そしてペイトリオッツの追撃を遮断するキックオフリターンTDを決めたKRデズモンド・ハワードの両選手もシーズン後半に急遽加入した「Xファクター」であります。



さて、第53回スーパーボウルの舞台となるメルセデスベンツ・スタジアムのフィールドに立つのはどの2チームでしょうか?

カンファレンス決勝終了後にまたお会いしましょう。




[了]

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