2018年シーズン AFC決勝 展望

2019年1月17日
かなり久々となりますが、NFLの話題を。

ついに2018年シーズンもカンファレンス決勝週に突入。そこで二回に分けてそれぞれのゲームの見所と予想について触れて参りますのでお付き合い下さい。今回はニューイングランド・ペイトリオッツとカンザスシティ・チーフスのシード同士の対戦となるAFC決勝についてお話したいと思います。



AFC決勝 ニューイングランド・ペイトリオッツ vs カンザスシティ・チーフス スキーム比較

まずは直接対戦したレギュラーシーズン第6週のゲームを参考にしてみましょう。スコア的にはかなり白熱した内容でしたね。
ペイトリオッツの「究極のマンネリ」攻撃を封じる事は最早不可能かと。レシーバー陣は人外な能力を有している訳ではないので(TEロブ・グロンカウスキも昔ほどでは無くなっているし…)プレスをかけてしまえばそこそこパスのタイミングを遅らせるのも可能ですが、プレイアクションがかかっていたり他の選手の裏側からリリースする等の細かい工夫がプレイに施されているため彼等はDBに触られずにひょいひょいパスコースを走る事が出来ています。そして相手守備にとって最大のネックとなるのが、パスプロテクションが果てしなく長い時間維持出来ている事です。そりやあ、「G.O.A.T.」QBトム・ブレイディにこれだけの時間を与えたらポイポイとパスを決められちゃいますよ…そこで相手守備がラッシュの枚数で勝負しようとすると、そのタイミングを推して計ったかのようにRBジェイムズ・ホワイトまたはソニー・ミシェールのスクリーンが飛び出し、普通にパスを投じたかのような長い距離に加えて時間も奪ってしまうという感じで相手守備に「トドメを刺す」のも定番パターンです。

チーフスには撃ち合いを制する事で活路を見出して欲しいトコロ。ペイトリオッツDB陣に関して言うと、QBがポケットからブレイクそしてレシーバーを探してパスを投じた状況でボールを奪っている事から、パスカバーを長い時間維持出来る点が長所として挙げられます。それゆえ「高機動型移動砲台」であるQBパトリック・マホームズが得意とする「ファンタジスタ」的プレイは若干相性がよろしくないような感じが。現在のペイトリオッツDB陣は積極的にプレスをかける傾向がある訳ではないので、序盤は早いタイミングのパスをバンバン決めてリズムを作る事が得策かと。また、スクリーンを初っ端から仕掛けていくのもアリだと思います。少ない人数で圧力をかけられるペイトリオッツの守備フロントのパスラッシュを緩和する役割を果たしますからね。その展開を続けてからの大きなゲインを狙える「裏プレイ」のようなものを用意してTDを奪う…というストーリーになるでしょうか。そこで鍵になるのが「変態的」スピードを誇るWRタイリーク・ヒル。今まで勝利に繋がるゲームブレイクをしてきたのはこの選手なので、彼がボールを沢山タッチ出来る環境を作る事にかかっているような気がします。



HC比較そして勝敗予想

ペイトリオッツを率いるのは言わずと知れたNFLの暗黒卿ことビル・ベリチックHCですが、何といってもゲーム中の調整能力において肩を並べる指揮官はNFLに存在しないと言っても良いでしょう。あくまでも筆者個人の見解ですが、ベリチック卿はゲームプランを立案する際に緻密な「脚本作り」をするというよりも、起こりうるシチュエーションにおける対処法を出来る限りリストアップしてそれらをすかさず実践出来るように準備しているような気がします。この考え方は前後裁断的に眼下の状況における「最適解」を選択するノーハドル&スプレッドガン攻撃の潮流にもフィットしていますし、何といっても絶望的な前半のビハインドから息を吹き返した第51回スーパーボウルの大逆転勝利についても説明がつきますからね。

一方のチーフスを統べるNFLの安西先生ことアンディ・リードHCは、1980年代から1990年代にかけてフットボール界を席巻したウエストコースト攻撃「学派」出身。ゲーム運びの理想的な「脚本作り」が重要視される攻撃スキームであるため、上手くハマッた時の得点の入り方が尋常ではありませんでした。逆に「脚本」を狂わすようなシチュエーションに直面すると攻撃が機能不全を起こし、そこからのリカバリーがなかなか出来なくなってしまうという弱点も有しています。安西先生が時折「?」なプレイコールを敢行してしまうのは、そのシチュエーションにおける「最適解」が「完璧に立てた脚本」に隠れてしまうからなのかも知れません。これを「ウエストコースト症候群」とでも言いましょうか…また、小刻みにゲインするスタイル故にフィールドポジションの優位性を保つ必要があるため、ウエストコースト攻撃を採用して強豪になり得たチームは強固な守備と安定したキッキングチームが背景にあったのも看過する事は出来ません。決して現在のチーフス守備が弱いという訳ではありませんが、ペイトリオッツ攻撃とのマッチアップでは分がよろしくないと言わざるを得ないでしょう。



筆者が予想するゲーム展開としては以下の2パターン。

ペイトリオッツが守備による「仕掛け」を序盤に行いマホームズからボールを奪いながら得点を重ね前半大きく先行、後半にチーフスが獅子奮迅の追い上げを見せるも前半に出来た「借金」が響いてタイムアップ。もう一つは、レギュラーシーズン通りの交互に得点を奪い合うような展開で終盤にチーフスがリード。ところが最早「お家芸」となりつつある終盤の時間消費に失敗して、怒涛のキャッチアップを敢行するペイトリオッツ攻撃が逆転に成功…という感じでしょうか。ちなみにペイトリオッツもホームスタジアムが屋外で寒冷地所在であるため、チーフスのホームフィールドにおける優位性はあまり影響しないと考えています。



筆者の勝者予想:ニューイングランド・ペイトリオッツ






それでは最後に、安西先生が巨漢中学生だった頃の貴重な映像を御覧になってお別れしたいと思います。

Source : Andy Reid’s Punt-Pass-Kick Bomb on YouTube

 

チーフスのファンの皆さんは、安西先生がこの時に被っていたヘルメットと同じデザインのチームとスーパーボウルで合間見える事を期待されているはずだと思いますが、さて結果はいかに…?

それでは、また次回お会いしましょう。




[了]

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