第53回スーパーボウル特集 RB編 

2019年1月26日
いよいよ目前まで迫ってきた第53回スーパーボウル。これからの「スーパーウィーク」期間は出場チームの戦力比較などのトピックについて触れて参りますので、観戦する際の「お供」にして頂けると幸いです。

今大会において一番の目玉と言って良いのが両チームのRBのユニット。ここからお話したいと思います。



ロサンゼルス・ラムズ 「重厚」RBデュオ

まずはロサンゼルス・ラムズのトッド・ガーリーとC.J. アンダーソンによる、昨年12月に誕生したばかりながら「重厚」さを誇るRBデュオから。両選手ともに115ヤード超を獲得する「爆走」を披露した、ディヴィジョナルラウンドの対ダラス・カウボーイズ戦でのハイライトを御覧下さい。
「万能型」ガーリーが今までラムズ攻撃の屋台骨を長年支えていましたが、「突貫型」アンダーソンの走りと強力な攻撃ラインのブロッキングが相まってランプレイに「野性味」が加わったような気がします。ガーリーを切れ味の鋭い「長刀」とするとアンダーソンは全てをなぎ払う「戦斧」とでも形容できるでしょうか、それぞれの役割分担がハッキリしていますよね。



続いて両選手の素顔も覗いてみましょう。

トッド・ガーリー

カリフォルニアの青空と白浜でのワークアウト風景が実に似合うシャレオツな選手です。何といっても均整のとれた体型がカッコイイ。ルックスだけでなく、チームプレイヤーとしての振る舞いを徹底しているトコロも「男前」度MAXであります。

古くはハーシェル・ウォーカーやロドニー・ハンプトン等の大型ランナーを、近年でもCFBで顕著な活躍を見せる選手をNFLに数多輩出しているジョージア大出身。

※ガーリーの学生時代についてはコチラをどうぞ。

 

 

 

C.J. アンダーソン

ボーリング球みたいな丸っこい体型にマッチした愛嬌たっぷりの兄ちゃんです。2018年シーズンはデンヴァー・ブロンコスにカロライナ・パンサーズそしてオークランド・レイダースの計3チームから解雇を通達されながらも、スーパーボウルという大舞台へのカムバックを見事果たしたのは実にアッパレであります。しかし、インタビュアーのキーショーン・ジョンソン(元ニューヨーク・ジェッツ等WR)が表情だけでなく体型もかなり丸くなっちゃいましたね…

あの「ビーストモード」ことマーショーン・リンチの後輩となるカリフォルニア大出身。



アンダーソンの体形やプレイスタイルを見ると、第25回スーパーボウルMVPでニューヨーク・ジャイアンツ所属だった同姓のオーティス・アンダーソン(O.J.と表記する場合もあるので、何気に一字違いという)を思い出されるオールドファンの方もいらっしゃるかも知れません。そのオーティスの走りは、以下の第25回大会のハイライトで確認が出来ます。
冒頭に登場するビル・ベリチック(当時はジャイアンツの守備コーディネーター)がむっちゃ若いですねー

現在でこそ複数のRBを「タンデム」するスキームは一般的でありますが、一人のエースRBに依存するスタイルが主流だった当時で「タンデム」式を採用していたジャイアンツは時代を先取っていた事を御理解頂けるかと思います。この時の経験がベリチックのRBを併用する方針に影響を与えているのは想像に難くないはずです。

ちなみに当時のジャイアンツで先発WRを務めているマーク・イングラムは、皆さん御存知の現ニューオリンズ・セインツRBの父上であります。イングラムと言えば、先にシニアの方を浮かべるというオールドファンの方も多いのではないでしょうか。




ニューイングランド・ペイトリオッツ 「疾・柔・剛」RBトリオ+1(プラスワン)

続いてニューイングランド・ペイトリオッツのRBユニットは、ジレット・スタジアムを本拠地にしているだけあって「三枚刃」。まずはそれぞれのプレイぶりを覗いてみましょう。

ソニー・ミシェール

RBはドラフト下位かFAで拾ってくれば良いだろうというスタンスだったベリチックHCが2018年ドラフトにて一巡指名しただけあって、その「慧眼」にかなう活躍をルーキーシーズンから披露しています。三人の中で「疾」の部分を担当し、一線を抜けてからのスピードはピカイチ。さらに走る穴を正確に判断出来るブロッキングスキームの理解力も出色で、その点がロングゲインの「打率」を上げているように思われます。

クリーブランド・ブラウンズで先発の座を射止めたニック・チャブと「同期の桜」で、先述のガーリーの後輩となるジョージア大出身。

※ミシェールの学生時代についてはコチラをどうぞ。

 

 

 

ジェイムズ・ホワイト

ペイトリオッツの第51回スーパーボウルの勝利は決して彼抜きで語る事が出来ないでしょう。通常のランやスクリーンにパスプロテクションを全てソツ無くこなすだけでなく、レシーバーセットからのパスプレイにおいてNFLのCB相手にリリース負けしない「柔」の選手です。ベリチックHCがホワイトを重宝しているのは、先述のジャイアンツ時代にデイヴィッド・メゲットという小兵RBが様々な役割を担って攻撃に貢献していたのを見ていた事も少なからず影響しているように思われます。

TEロブ・グロンコウスキーが脂の乗った鰤(ぶり)でWRジュリアン・エデルマンが旬の白菜とすればホワイトは締めの雑炊にあたるように見えますが、一説には最後の御飯のために魚や野菜があるという解釈があるとの事。ひょっとするとペイトリオッツのレシーバー陣は、ホワイトのプレイを「お膳立て」しているに過ぎないのかも知れません。

かつてはハイズマン受賞者ロン・デイン、現在のNFLをリードしているメルヴィン・ゴードンやコーリー・クレメント等を輩出しているウィスコンシン大出身。



レックス・バークヘッド

ベリチックHCはレギュラーシーズン中のゲームにて勝利がほぼ確定したら、ゲーム内容そっちのけで相手チームの良さそうな選手を物色しているのではないかという説がありますが、シンシナティ・ベンガルズに在籍していたバークヘッドもその一人ではないかと思われます。

ショートヤードを獲得するための中央のパワーランやショートパスにおいて本領を発揮、三人の中では「剛」の部分を担当しています。もし解説者の後藤完夫さんが御存命であるならば、間違いなくお気に入りの選手なっていたのではないでしょうか。

ハイズマン受賞者マイク・ロジーア、サンフランシスコ・49ersの黄金期を支えたロジャー・クレイグとトム・ラスマン等に代表されるトルクとスキルを併せ持ったパワーバックを数多輩出しているネブラスカ大出身。




続いてこのトリオの素顔にも注目してみましょう。
身体はごっついものの三選手ともそこら辺に居そうな感じの良い兄ちゃん達で、なおかつ仲良さげなのもよく分かりますね。



そして、このトリオも「独力」で走っている訳ではない事を強調しなければなりません。彼等の走りを支えている「プラスワン」の選手にもスポットを当てたいと思います。

ジェイムズ・デヴリン

ペイトリオッツ攻撃が2RB隊形を敷いた際、RBトリオのために「血路」を開いているのがこちらのFBデヴリン。ランによるロングゲインの陰には必ず彼がLBを「撃沈」させている姿が見られます。ブロックだけでなく残りヤード僅かでのショートパスやボールキャリーでも貢献しており、地味ながらも自らの責務を全うする「必殺仕事人」の存在は頼もしい限り。AFL等のプロフットボールチームを経てペイトリオッツ入団という経歴も、名ではなく腕一本でのし上がってきた「職人」っぽいですね。

ハーバード大に代表される「秀才」大学群であるアイビーリーグのブラウン大出身。



「市場価値」の復活 -新たなRBユニット像-

ちょっと前までならば「消耗品」と見なされてNFLドラフトで一巡指名を忌避されていたRBのポジションですが、暴落した「市場価値」も近年では「上昇トレンド」に転じています。これは、パス攻撃にアジャストして「軽くなった」守備への対策として2RB隊形からのランプレイが再評価され、それに伴った複数RB併用システムの拡散が起因しているように思われます。

いくつかの例を除くとかつてのエースRBといえば「もっと俺にボールをよこせ」と言い放つような尊大な選手が多かったものですが、今回紹介させて頂いた選手たちは皆ナイスガイで互いを尊重出来る「大人」である事を御理解頂けたのではないでしょうか。ひょっとするとRBの「市場価値」復活は戦略や戦術の潮流や選手の能力向上というよりも、こういったポジション全体における人間性の「成熟」が進んだ事に根ざしているのかも知れません。それを象徴している両チームの「走りの競演」は、きっと今大会において最大の見所となるはずでしょう。



[了]

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