第53回スーパーボウル レビュー

2019年2月9日
近年はハイスコアリングな熱戦を繰り広げるゲームが続いていたスーパーボウルですが、久々のロースコアの渋チンな内容でTVの視聴率にも大きく影響を及ぼしてしまったニューイングランド・ペイトリオッツとロサンゼルス・ラムズの17年ぶりの再戦。筆者の見解を交えながら第53回大会を振り返ってみましょう。

Source : Patriots vs. Rams | Super Bowl LIII Game Highlights on YouTube

 

 

 

 

ラムズ守備は「大金星」そしてエデルマンMVP受賞に貢献?

プレイオフ同様にラムズ守備はフロントで「G.O.A.T」トム・ブレイディにパスラッシュを浴びせながら、セカンダリーはTDを防ぐために深いゾーンをひたすら死守するスタイルを維持。その甲斐あってかブレイディから出鼻のインターセプトやQBサックをお見舞いさせて前半はTDなしの3失点、さらにゲームを通じて13失点に留めたのは間違いなく「大金星」です。ラムズDTアーロン・ドナルドが「全くブレイディに触れなかった」と謙遜気味にコメントしていましたが、勝利インタビューにおけるブレイディのビミョーな表情からもラムズ守備が凄まじかった事を物語っているような気がします。

10捕球141ヤード獲得した上にポストシーズン総レシーブ回数と距離の歴代記録2位(どちらも1位は勿論ジェリー・ライス)に躍り出たペイトリオッツWRジュリアン・エデルマンが今大会のMVPを受賞した訳ですが、このスタッツはラムズ守備がエデルマンへのショートパスを意図的に通させて時間消費を狙った戦略の「産物」と言って良いでしょう。勝敗がついて、さて誰が目立ったでしょうか…と周りを見渡したらスタッツが目に入ったという感じの選出だったように思われます。

惜しくらむはTEロブ・グロンコウスキーに要所でキャッチを許してしまった事。ウェイド・フィリップス守備コーディネーターはLBの選手にグロンクのマークを担当させていましたが、あそこはCBアキーブ・タリーブに任せるべきであったと個人的には思います。デンヴァー・ブロンコス時代にタリーブがグロンクを「封殺」した事があるため相性的には良かったはず。その時のブロンコス守備コーディネーターがフィリップスであったので、今回は何故タリーブにマークさせなかったのかを伺いたいものです。


敗因はゴフの「固さ」そして攻撃の「密集隊形」

NFC決勝あたりから「スーパーウィーク」にかけて気になっていたのがラムズ先発QBジャレッド・ゴフの「固さ」。それを象徴していたのがゴフのボールの握り方で、たまたまTV画面でゴフの手元のアップが映し出された際にボールを若干深く握っていた事に気が付きました。野球と同様に深くボールを握ってしまうとリリース時に指先で「切る」事が出来ず、しっかりしたスパイラルがかからなくなってしまったり短い微妙なタッチのパスがすっぽ抜けになってしまう問題が生じてしまいます。サイドラインでのキャッチボール風景においてボールを放った後の手先の「固さ」を確認出来てしまったため、筆者個人としても観戦しながら「こりゃあ、キツイな…」というのが正直な感想でした。

「たられば」は禁物である事を承知で言うと、もし先発QBがパトリック・マホームズであったならばラムズがヴィンス・ロンヴァルディ杯をロサンゼルスに持って帰っていたかも知れませんし、さかのぼってカンザスシティ・チーフスがラムズの守備を有していたならば間違いなくペイトリオッツは今回のスーパーボウルに出場していなかったでしょう。

ただ、ラムズの3得点のみという結果はゴフだけに責任を負わせるにもいきません。あくまでもランプレイが主軸という「矜持」あるいは単なる「ネタ不足」のどちらなのか分かりませんが、ラムズ攻撃が両翼を狭める「密集隊形」を多用し過ぎたのもペイトリオッツ守備にとって有利に働いたのは間違いないでしょう。格上の守備と相対する際は攻撃の隊形をフィールドいっぱいに広げて空間を創出して、そこを徹底的に突いて次の展開に持っていくのがフットボール「兵法」の基本であります。あらゆる形のスクリーンプレイを用いて守備を「いなした」後に自慢のランでフィニッシュするというパターンが今回のラムズ攻撃の理想だったように感じますが、今回はその逆をやってしまったんですよね…もしショーン・マクヴェイHCにインタビュー出来るのならば、その辺りを突っ込んで聞いてみたいと個人的には思いました。

前回スーパーボウルを制した時と同じ仕様のユニフォームで臨んだラムズでしたが、「縁起」や「ゲン担ぎ」は存在しない事を証明してくれたのも「What we learn 」なのかも知れません。



来シーズンはNFL100周年

両カンファレンス決勝がアツ過ぎる内容であったせいか両チームとも「バーンアウト」してしまった感は否めなかったり、ハーフタイムショウに絡んだ不穏な雰囲気もあったりと、史上最も「ミソ」がつく大会のひとつとなってしまった第53回スーパーボウル。来2019年シーズンはNFL100周年という事もあり、リーグとしては是が非でも盛り返したいトコロです。



それでは最後に本チャンのゲームよりもエキサイティングだったこちらのNFL100周年CMを御覧になってお別れしたいと思います。

Source : The 100-Year Game | SBLIII on YouTube

 

 

 

 

 

[了]

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