2018年CFB注目選手 vol.15 中央フロリダ大 QB マッケンジー・ミルトン

2018年10月26日
第8週を終えたCFB2018年シーズンですが、連戦連勝だったオハイオ州立大がパデュー大によもやの大敗を喫したためFBSの無敗チームは5校を残すのみとなりました。お約束のアラバマ大に地力を見せつけているクレムソン大と古豪復活のノートルダム大の面々は皆さんも納得のトコロだと思いますが、Big TenとPac-12そしてBig 12のカンファレンスからは全勝が消えてしまった中、あとの2校を挙げるのはかなり難しいはず。今回はその無敗チームのひとつを牽引する先発QBにスポットを当てて参りますのでお付き合いの程を。


NFL選手の隠れた名産地、中央フロリダ大の「牛若丸」

現役選手ではブレイク・ボートルズやシャキール&シャキーム・グリフィン兄弟にブランドン・マーシャルそしてラタヴィアス・マーリィ、かつての名選手でもダンテ・カルペッパーやアサンテ・サミュエル等、NFLになかなかの人材を送り込んでいる中央フロリダ大ナイツですが、昨2017年シーズンは13戦全勝で終えるという快挙を成し遂げてしまいました。その原動力となり2018年シーズンもハイズマン賞候補にも数え上げられる活躍を見せているのは、三年生QBマッケンジー・ミルトンであります。


あのアラバマ大を破ってSEC決勝まで進んだオーバーン大を2018新年のピーチボウルにてケチョンケチョンにした活躍を含む、2017年シーズンのハイライトをまずは御覧下さい。
身長は180cm足らずと我々日本人とサイズ的には大差ないミルトンですが、彼は三つの「武器」でCFBの舞台を戦い抜いています。

ひとつは「牛若丸」を彷彿させるような(実際に源義経を見たことはありませんが…)軽快なフットワーク。リードオプションでのキーパーに自らのQBドローでしたたかにゲイン、そして窮地においてもエスケープからの的確なパスで局面を打開しています。

ふたつめは、彼の独特なスローイングのメカニズムです。まるで両手で投げているようにも見えますが、これが格闘技における「寸打」のようなリリースの素早さを生み出し、あらゆる体勢からのスローイングを可能にしています。加えてコントロールの精度と飛距離に関しても申し分ありません。

そして最大の「武器」と言えるのが、目線とパンプ(投げる動き)のフェイクが非常に巧みな事です。これにより守備を撹乱し、自らのQBドローや長い距離のパスをロングゲインないしTDに繋げています。




2018年シーズンのハイライト

それではミルトンの2018年シーズンの活躍を追っていきましょう。


いきなりアクセル全開 コネティカット大戦

開幕は同じAAC(アメリカン・アスレティック・カンファレンス)東地区所属のコネティカット大戦。346ヤードに5TDを奪ってしまうとは、いきなりアクセルふかし過ぎです。



ACCの刺客も返り討ち ピッツバーグ大戦

近年AACにおいて首位チームから「金星」を奪う事が度々あるピッツバーグ大をホームに迎えますが、「おたくのカンファレンスの名前さぁ、ウチん所と紛らわしいんだけど」とでも言わんばかりに中央フロリダ大は攻守に渡り圧倒しました。



かなり冷や汗 メンフィス大戦

最も苦戦したのが、こちらの同AACの対岸になる西地区所属のメンフィス大戦。ミルトン率いる攻撃は要所を封じられ、かつ守備の方もランプレイを出されまくったため、後半の序盤までは中央フロリダ大が2ポゼッション差を追う事態に。何とか逆転に成功して勝利を収めたものの、ミルトン始めナイツの面々にチンベルトを締め直させる内容となりました。

かなり余談ですが、こちらのメンフィス大の奇怪なヘルメットの模様はシンシナティ・ベンガルズよろしく虎の縞をあしらっているとの事。団塊ジュニアの筆者にとっては、昭和の特撮番組『超人バロム1』に出てくる戦闘員のアントマンにしか見えないのですが…



ミルトンの素顔  ーハワイ出身QBの躍動ー

それでは恒例の素顔チェックに参りましょう。
ハワイ出身という事もあってか、エキゾチックな印象を受けます。若い頃のジャン=クロード・ヴァン・ダムという感じでしょうか。見ようによってはマイケル富岡さんかも…いずれにせよ運動能力高めの凛々しい面構えですね。



テネシー・タイタンズで先発を務めるマーカス・マリオタ、そして目下ハイズマン賞候補筆頭に挙げられているアラバマ大二年生トゥア・タゴヴァイロアも、こちらの動画で紹介されている通りハワイ出身であります。今や観光だけでなく、「旬」のQBを見つける事が出来る「ホット」なスポットになっているようですね。
同郷の「出世頭」であるマリオタをオレゴン大時代に指導していたスコット・フロストが当時HCだった事もあり、ミルトンは中央フロリダ大への進学を決意したようです。このフロストとミルトンのケミストリー抜きに中央フロリダ大の躍進は語れないでしょう。今シーズンから母校であるネブラスカ大の指揮を執る事になったフロストも大変興味深い人物なので、またの機会にお話しさせて頂きたいと思います。

ちなみにフロストが中央フロリダ大を去った後にHCに就任したのは、ミズーリ大で攻撃コーディネーターを務めていたジョシュ・ハイペル。フロストとハイペルの共通点は、学生時代に先発QBとしてネブラスカ大とオクラホマ大をそれぞれ全米王座に導いた事。御両名ともに選手としての能力がズバ抜けていた訳ではないのですが、名将であるトム・オズボーンやボブ・ストゥープスが築き上げたチャンピオンチームを体感しているのは折り紙つき。そんなコーチからの指導はミルトンにとっても大きなプラスとなっているはずでしょう。






またもや「全米王者」となるか? 天王山は最終週のサウスフロリダ大戦

そういえば無敗のチームが「5校」あると言っていたけど、あと1校はどこよ?…と思われている方もいらっしゃるのでは。その残り1校は、中央フロリダ大と同じくAAC東地区所属のサウスフロリダ大であります。最終週に直接対決が組まれているため、両校とも全勝で迎えるとなると盛り上がるのは必至でしょう。


参考までに、壮絶な撃ち合いとなった昨2017年シーズンのゲームをどうぞ。名将チャーリー・ストロング率いるサウスフロリダ大もなかなかの強いチームに仕上がっています。

Source: South Florida vs UCF 2017 Week 13 Highlights on YouTube

 

 

 

昨2017年シーズンをFBS唯一の無敗で終え、CFP(カレッジフットボール・プレイオフ)決勝戦の勝者であるアラバマ大に勝っているオーバーン大をボウルゲームで下した事もあり、中央フロリダ大は自分達こそが「全米王者」であると主張。こんな派手に内々の祝賀会をおっぱじめてしまいました。

Source: Knights National Champions Celebration on YouTube

 

 

当然ながら、同じく「全米王者」であるアラバマ大のニック・セイバンHCは「まあ、プレイオフに進出してから言うこっちゃね」みたいなコメントを。しかしCFPランキングのトップ4校のみがプレイオフに進出する現行のシステムでは、パワー5(SEC、ACC、Big Ten、Pac-12、Big 12の五大カンファレンス群)ではないAAC所属の中央フロリダにとって少し酷であるような気もします。

昨シーズンのプレイオフ進出校はSEC2校とACCとBig 12は1校ずつで全てレギュラーシーズンにて1敗を喫していましたし、中央フロリダ大はボウルゲーム前のCFPランキングで何と12位。今シーズンも第9週のランキングは10位でプレイオフ圏内までにまだまだ遠く、BCS(ボウル・チャンピオンシップ・シリーズ)施行時代に無敗でレギュラーシーズンを終えながら王座決定戦に進めなかったボイシー州立大を見ているような気の毒さを感じずにはいられません。

100年近くの歴史を持つようなチームがゴロゴロしているCFBにおいて、1979年創部のかなり若いチームであるナイツの奮闘は何だか勇気づけられるものがあります。引き続き、ミルトンと共に2018年シーズンの残りを見守っていきたいと思います。



[了]

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