2018年CFB注目選手 vol.14 新進気鋭のフレッシュマンQB群

2018年10月20日
今2018年シーズンで顕著な現象のひとつが、ピカピカのフレッシュマン(一年生)QBが上級生から先発の座を奪う「下剋上」。しかも彼等は、これからCFBのスター選手になり得るポテンシャルを持った逸材揃いです。早くもチームを牽引あるいは今後の活躍に期待出来るフレッシュマン有望株を、今回はご紹介して参りたいと思います。



先発を奪取したフレッシュマンQB

最初は2018年シーズン早々に先発を奪い取ったフレッシュマン達になります。

クレムソン大タイガース トレヴァー・ローレンス

ハイスクール時代から全米で注目を浴びており、長身・強肩・俊足の三拍子が揃った選手です。そのプレイぶりは現カロライナ・パンサーズのキャム・ニュートンを彷彿させ、筆者は早くも「金髪のキャム」の二つ名で呼んでおります。

2018年シーズン開幕当初は昨シーズンから先発を務めていた四年生ケリー・ブライアントの交代でぼちぼち出場する感じでありましたが、ダボ・スウィニーHCは第5週のシラキュース大戦からこちらのローレンスへの先発移行を宣言。傷心のブライアントは転校するため退部を決意してしまうという、ちょっとした「お家騒動」に発展してしまいました。天才QBトゥア・タゴヴァイロアを擁する王者アラバマ大に対抗するためにはこちらも「規格外」で臨まなければならないというスウィニーHCの覚悟は分からなくもありませんが、今シーズンはブライアントに先発を任せつつ大器ローレンスをじっくり育てる方針で良かったような気がします、個人的には。



マイアミ大ハリケーンズ エンコーシー・ペリー

V字回復となった昨シーズンから攻撃を引っ張ってきた四年生マリク・ロージャーが2018年シーズンも先発に指名されましたが、開幕戦でルイジアナ州立大の堅守の前に得点力が伸びず敗戦。そこでマーク・リクトHCは「刺激策」として一年生のペリーを先発に抜擢した所、これが大当たりと出てマイアミ大のパス攻撃が活性化しました。

まだまだフレッシュマンらしい線の細さではありますが、ボールの落とし所のセンスは確かに光るものを持ち、フットワークもかなりスムーズでパスラッシュを回避してパスを投じる能力も出色です。マイアミ大はこれからのカンファレンス内対決で勝ち続ければ今シーズンも地区優勝を掴む事が出来るので、ペリーがその鍵を握る選手となるのは間違いないでしょう。



ノートルダム大ファイティングアイリッシュ イアン・ブック

こちらもマイアミ大に似たようなケースで、ノートルダム大は昨シーズンの攻撃を牽引した三年生ブランドン・ウィンブッシュを引き続き2018年シーズン開幕の先発に据えました。黒星を喫していないものの攻撃の停滞を案じたブライアン・ケリーHCは、テコ入れとして第4週のヴァンダービルト大戦から先発をブックに変更。そこからウソみたいに大量得点ゲームのオンパレードとなりました。

パスのリリースが非常に素早く、正確性の方も申し分ない選手です。ノートルダム大の強力攻撃ラインのパスプロテクションの恩恵に預かって思う存分投げまくっていますが、これが守備フロントに刺し込まれまくった際にどうなるかは未知数と言わざるを得ません。ゲーム後のインタビューではフレッシュマンらしからぬ自信満々な雰囲気を漂わせていますが、こういう自信満々タイプはNFLに進むと鳴かず飛ばずで終わるケースが多いんですよね…



UCLAブルーインズ ドリアン・トンプソン=ロビンソン

筆者個人としては、彼がこの中で最も運動能力が高くて「何か」を起こす能力を有しているように感じています。ミシガン大からの転校生で開幕先発に指名された四年生ウィルトン・スペイトの負傷退場を受けて交代した時は、正直おっかなびっくり感がハンパありませんでした。ところが先発を任されるようになってからは2次曲線的な成長を遂げ、同カンファレンスで堅守に定評のあるワシントン大相手にかなりインパクトのあるプレイを披露しています。

あの「ノーハドル攻撃の魔術師」チップ・ケリーがHCに就任した事で話題を呼んだUCLAですが、ゲーム毎に自信をつけて攻撃を引っ張りつつあるドリアン=トンプソンがこれからのチームの「顔」になるのは間違いなさそうです。




虎視眈眈と先発を狙うフレッシュマンQB

こちらの二人は現先発QBが順調に攻撃をドライブさせているため控えに甘んじていますが、彼等もかなりのポテンシャルを有しています。交代出場した際の素晴らしいパフォーマンスをどうぞ。

ジョージア大ブルドッグス ジャスティン・フィールズ

昨2017年シーズンにフレッシュマンながらジョージア大を王座決定戦まで導いたジェイク・フロームが先発をきっちり務めているため「下剋上」に至っていませんが、投走ともにフレッシュマンらしからぬダイナミックさを感じさせてくれます。体格もかなりしっかりしており、その点においては守備選手と対峙しても見劣りする事はありません。現段階で先発を任せてもそれなりに務められそうな感じはしますが、カービー・スマートHCは焦らずじっくりとフイールズを育てたい意向なのかも知れません。



オハイオ州立大バッカイズ テイト・マーテル

今2018年シーズンからオハイオ州立大の先発を務めている二年生ドゥエイン・ハスキンズが毎試合とんでもないパス成績を叩き出し、さらに先日トレイス・マクソーリー擁するペンシルヴァニア州立大との接戦で逆転ドライブを成功させて評価がうなぎ上りのため、こちらのマーテルもベンチを温める状態が続いています。しかし、ひとたび出場機会を得るとこちらの動画のように「ファンタジスタ」ぶりを発揮。あの「ジョニー・フットボール」ことジョニー・マンゼル(現CFLモントリオール・アルエッツ)の学生時代を彷彿させるものがあり、来シーズン以降もアーバン・メイヤーHCは安泰のように思います。(不祥事とかなければ)




近年の「攻高守低」トレンドの表れ?

数年前までのCFBにおいては守備にタレントを固めて攻撃はちょっと良いRBを軸にボールコントロールを行うチーム作りが主流でしたが、ここ最近は投走に優れたQBにアドリブ的な動きをさせる事により、攻撃パターンを読んでいる守備の虚を突いて大量得点に結びつけるスキームがあちこちで見られるようになりました。そのため各カンファレンスでは攻撃のスキルポジション陣にタレントを集中させる傾向が強まり、アラバマ大を始め守備がしっかりしているSECのトップ校は例外として、「攻高守低」のトレンドが出来上がっていると筆者は感じます。

近年ハイスクールにおける「QB教育」が盛んになり、基礎技術を習得した状態で大学入りする選手が増加している事も「攻高守低」に拍車をかけているように思えます。恐らく来シーズンもびっくりするような新入生が現れるハズなので、上記の彼等も今後のCFBキャリアが安泰とは断言出来ないかも知れません。CFBの新陳代謝は、ある意味NFLよりも「あな恐ろしや」です。



[了]

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