2018年シーズン ボウルゲーム総評
本年も日本国内の「フットボール人」諸子へのさらなるインスパイアに努めて参りますので、引続き何卒よろしくお願い致します。
お正月の季語に挙げても良いボウルゲーム。そこで、王座決定戦に進出する二校以外はシーズンの締めくくりとなるCFBボウルゲームの総括をして参ります。今回もどうかお付き合いの程を。
新年六大ボウル
※()内は所属カンファレンス名
ピーチボウル フロリダ大(SEC)vs ミシガン大(Big Ten)
Source : 2018 Peach Bowl #10 Florida vs #7 Michigan Full Game Highlights on YouTube
攻撃は多様なフォーメーションとプレイを用意しながら単調な攻撃となり得点を相手守備に許して貰えないという、フットボールで頻繁に見られるパラドックスにハマッてしまう事に。今シーズン通して、QBシェイ・パターソンやWRドノヴァン・ピープルズ=ジョーンズ等の攻撃タレントを活かしきれなかった感じが非常に口惜しい限りです。
守備においてもDLのパスラッシュ自体は良かったと思うのですが、LBとDBが完全にフロリダ大のスキルポジションとのマッチアップでやられていたのでズルズルとゲインされまくりました。カンファレンス内では苦戦していても、やっぱりSECのチームは強いですね…
フィエスタボウル ルイジアナ州立大(SEC)vs 中央フロリダ大(AAC)
Source : 2019 Fiesta Bowl #11 LSU vs #8 UCF Full Game Highlights on YouTube
結構優秀なLSUのDB陣とのマッチアップでUCFのWR陣が良い勝負していたのも印象的で、本当にミルトンの不在が悔やまれるトコロです。恐らく、現在のPac-12のチームにおいては殆どがUCFに勝てないのではないでしょうか。それくらいの強さを有しているチームであると個人的には感じています。
ローズボウル ワシントン大(Pac-12)vs オハイオ州立大(Big Ten)
Source : 2018 Rose Bowl #9 Washington vs #6 Ohio State Full Game Highlights on YouTube
ハスキンスは2019年のドラフトへのエントリー濃厚のようですが、前に体重を乗せる投げ方ともたつくフットワークを改善しないとNFLでは相当キツイような気がします。後半のワシントン大の逆襲を支えたRBマイルズ・ガスキンは小柄ではありますが、かなり良い選手になるはず。筆者がNFLチームのGMならばドラフトの指名リストに挙げたいと思います。
シュガーボウル テキサス大(Big 12)vs ジョージア大(SEC)
Source :2018 Sugar Bowl #15 Texas vs #5 Georgia Full Game Highlightson YouTube
自陣深くにおけるPジェイク・カマーダのニーダウンにRBディアンドレ・スウィフトのファンブルという、ジョージア大が犯してしまった二つのボーンヘッドを得点に結びつけたテキサス大が序盤にリードを奪う形に。ゴツゴツ&ムチムチ系パサーのテキサス大QBサム・アーリンガーが自らのランでボールコントロールし、終盤のジョージア大による怒涛のキャッチアップをかわして試合終了。個人的にはかなり激しい撃ち合いを予想していたのですが、両校の守備が健闘してかなり締まった内容となりました。
その他のボウルゲーム
ミュージックシティボウル パデュー大(Big Ten)vs オーバーン大(SEC)
Source : 2018 Music City Bowl Purdue vs Auburn Full Game Highlights on YouTube
オーバーン大QBジャレット・スティダムのTDショーと言わんばかりに、21回試投15回成功の373ヤードに5TD獲得とパデュー大守備を完全に蹂躙。オーバーン大守備フロントもパデュー大QBデヴィッド・ブローのパスを幾度となくディフレクト、頼みの綱である韋駄天WRランデイル・モーアにボールが殆ど到達しませんでした。セカンダリーの刺し込みも強烈でパデュー大のボールキャリアの前進をことごとく阻止、終わってみると63-14のフルボッコなスコアでゲーム終了。カンファレンスの「格」の違いを見せ付ける結果となってしまいました。
アラモボウル アイオワ州立大(Big 12)vs ワシントン州立大(Pac-12)
Source : 2018 Alamo Bowl #24 Iowa State vs #13 Washington State Full Game Highlights on YouTube
近年Big 12で伸張著しいアイオワ州立大もレギュラーシーズン通りの健闘を見せて、最後まで分からないゲーム展開となりました。
アウトバックボウル ミシシッピ州立大(SEC)vs アイオワ大(Big Ten)
Source : 2019 Outback Bowl #18 Mississippi State vs Iowa Full Game Highlights on YouTube
強力ラインを背景に大型骨太QBニック・フィッツジェラルドがドカーンと投げてズバーンと走るという、ミシシッピ州立大の大味な攻撃スキームは相変わらず。2017年シーズン終盤につま先が明後日の方角に向く位の骨折をしてしまったフィッツジェラルドが、今シーズンはボウルゲームまで出場出来るくらい回復して何よりでした。対するアイオワ大の方は伝統的なLBとDBの良さは健在。以前こちらで紹介させて頂いたTEのT.J. ホッケンソンも終盤におったまげるプレイを披露しています。
ピンストライプボウル ウィスコンシン大(Big Ten)vs マイアミ大(ACC)
Source : 2018 Pinstripe Bowl Miami vs Wisconsin Full Game Highlights on YouTube
大黒柱のRBジョナサン・テイラーは205ヤードの爆走、守備陣も1つのファンブルリカバーに4つのインターセプトで計5つもテイクアウェイしてしまう鉄壁ぶりで、やはりウィスコンシン大の「中心線」の強さはハンパありません。あとはシャットダウン出来るCBとシステム越えを連発するWRがいれば、Big Tenタイトルも夢ではなさそうなのですが…
マイアミ大に関しては、さらに追い打ちをかけるように名伯楽マーク・リクトHCが辞任を表明。後任決定に関してもゴタゴタがあり、組織運営に暗雲が立ち込めている様子。常夏の地にも関わらず、残念ながらマイアミ大に「冬の時代」が再び到来しそうです。
アームドフォースボウル ヒューストン大(AAC)vs 陸軍士官学校(独立校)
Source : 2018 Armed Forces Bowl Houston vs Army Full Game Highlights on YouTube
ひょっとすると同じ独立校でプレイオフに出場したあのチームよりも実力は上なのかも…
タックススレイヤーボウル ノースカロライナ州立大(ACC)vs テキサス農工大(SEC)
Source : 2018 Tax Slayer Bowl NC State vs #19 Texas A&M Full Game Highlights on YouTube
テキサス農工大に関しては、守備ラインだけであれだけのパスラッシュがかけられるとは驚異的です。スキルポジションにもタフな選手が揃っていますし、再びSECをかき回す存在になり得るかと思います。2018年シーズンから指揮を執っている名将ジンボ・フィッシャーの手腕たるや恐るべしです。
リバティボウル ミズーリ大(SEC)vs オクラホマ州立大(Big 12)
春に開催されるNFLドラフトを控えてボウルゲームの出場を回避する輩が多い昨今、ロックは仲間達と最後までプレイをしたいという「漢」っぷりを表明。彼もNFLで先発を務められる能力と器を有しているので、応援しているNFLチームが指名した暁にはどうか喜んで下さい。今シーズンのオクラホマ州立大はカンファレンス内の成績は振るわなかったのですが、このゲームではカウボーイズが強豪である事を証明。それにしても、CFB界の竹内力ことマイク・ガンディHCは良いQBを育成しますね。
シトラスボウル ケンタッキー大(SEC)vs ペンシルヴァニア州立大(Big Ten)
Source : 2019 Citrus Bowl #14 Kentucky vs #12 Penn State Full Game Highlights on YouTube
そのQBが有する「品格」は、キャッチアップが厳しい状態であっても最後まで緊張感を持ってプレイし続けられるかどうかで判断出来ると思います。このゲームにおいて、まさしくマクソーリーはその「品格」の高さを証明しました。サイズ面でプロの世界では厳しいとする向きもありますが、筆者がNFLチームのGMならば間違いなく彼をドラフト指名する事でしょう。
ハワイボウル ルイジアナ工科大(カンファレンスUSA)vs ハワイ大(マウンテンウエスト)
Source : 2018 Hawai’i Bowl Louisiana Tech vs Hawai’i Full Game Highlights on YouTube
そしてこのゲームが我々日本人にとって歴史的な意味を持つのが、日本の高校から単身ハワイに乗り込んだ伊藤玄太選手が最後のドライブでボールキャリーとパスキャッチを記録した事です。伊藤選手自身による「この3プレイが忘れらるくらい日本人選手が活躍する事を願って」という言葉に何も感じずにはいられません。"Boys, be ambitious."…いや”Guys, be ambitious,too.”…であります。
やはりSECは強し -ファンダメンタル・ルネサンス(基礎復古)の到来-
その「カンファレンス対抗戦」という観点からすると、今年のボウルゲームはSECの圧勝であったのではないでしょうか。SECが他カンファレンスの追随を許していない要因として…
①LBとDBのクオリティが非常に高い事。ボールキャリアーを刺しまくって余剰ゲインを許さず、長い時間パスカバーを維持出来るためカバレッジサックを誘発するシーンが多く見受けられる。
②スキルポジションにヒットへの耐性が強く運動量豊富である選手が揃っている事。純粋なスピードという点ではACCやBig 12の方に上回っている選手が沢山いると言えるが、一人のタックルでは倒れずゲームを通してヒットを受けまくってもヘタる事がない選手の数に関しては他の追随を許していない。
③選手層の厚さによるキッキングチームが整備されており、有利なフィールドポジションの確保と確実な3点の奪取がコンスタントに出来ている。
…という感じでしょうか。
他カンファレンスがスプレッド攻撃に対応出来る速くて上手い「オシャレ」な選手を集めて斬新な戦術をインストールしてきた間、「走る」「ヒットする」「捕る」というフットボールにおける基礎動作を選手に徹底的に叩き込んでベーシックなプレイをやり込むというスタンスをSECは維持してきました。しかも「投げる」の分野が唯一弱かったのも、ドリュー・ロックやトゥア・タゴヴァイロア等の登場により今や過去の話になりつつあります。
先述の陸軍士官学校の健闘にも反映されているように、これからのCFBのキーワードは「ファンダメンタル・ルネサンス(日本語にすると『基礎復古』みたいな感じ?)」になるのではないでしょうか。フットボールのトレンドの発信地であるCFB、これからの動きも見逃す事は出来ません。
[了]
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