ローズボウル スタンフォード大カーディナル vs アイオワ大ホークアイズ (2016年1月1日開催)

2016年1月15日
今回は『新年六大ボウル』で最も由緒があると言ってもよいローズボウルの登場です。2016年はCFPの当番ではないため、従来通りPac-12代表とBig Ten代表による組み合わせとなりました。スタンフォード大カーディナルとアイオワ大ホークアイズの一戦をどうぞ。

ローズボウル記録を叩き出したクリスチャン・マカフリー

正直な所、以前紹介させて頂いたスタンフォード大RBクリスチャン・マカフリーによるワンマンショーの感は拭えません。USC戦で単独試合におけるラン、パス、リターンの総合獲得距離461ヤードというFBS記録を打ち立てた勢いそのままに、ここでも総合獲得距離368ヤードのローズボウル記録を叩き出してしまいました。ゲームの直後は、ハイズマン賞の選考をやり直した方が良いんじゃないの?という声も各方面でチラホラと出ていたようです。

こちらの中継動画でもマカフリー家がチラッと紹介されていますが、父上がスタンフォード大とNFLで活躍した名WRであるのは周知の所と思いますが、母上も同校の女子サッカー出身で、さらにお祖父様は五輪100mの銀メダリストというバリバリのアスリート一家であります。父上は長身と巧みさが武器で決してスピード派という訳ではありませんでしたが、どうやらクリスチャンの超絶スピードはお祖父様からの隔世遺伝みたいですね。そしてお兄さんも含め、皆スタンフォード大またはデューク大出身の秀才ばかりという…まさに無敵一族であります。

クリスチャンのチームメイトであるバリー・サンダース Jr.の父上も、学生時代にホリディボウルで第3Qまでに5TDと222ヤードをランで獲得するという人外っぷりを披露しましたが、今回のクリスチャンもそれに劣らぬパフォーマンスであったように思います。加えて、五人のうち四人が30試合前後の先発経験を持っているというスタンフォード大の熟練したOLユニットの存在も忘れてはならないでしょう。

アイオワ大エースQB C.J.ベサード

アイオワ大QBのC.J.ベサードも血族の話題で言えばかなり豪華で、お祖父様は所属したチームを通算7回スーパーボウルに導いた優勝請負人こと敏腕GMボビー・ベサード氏で、大叔父さんのピート氏もUSCの選手としてローズボウルに勝利しカンザスシティ・チーフスでも活躍した名QBであります。売れる前のブラッド・ピットに似ている田舎のもっさい兄ちゃんかと思いきや、実は相当のお坊ちゃま君だったようです。

アドリブを連発するアスレチックなタイプではありませんが、色々なプレーをバランス良くこなせる点でBig TenのQBっぽいと感じられます。今シーズンにおけるNFLのプレイオフ進出チームで先発QBの三分の一はBig Ten出身者(*)ですから、プロフットボールにQBを安定供給しているカンファレンスと言って良いのかも知れません。

(*)トム・ブレイディ(ミシガン大)、ラッセル・ウィルソン(ウィスコンシン大)、ブライアン・ホイヤーとカーク・カズンズ(共にミシガン州立大)

今回のWhat We Learned 各カンファレンスの『色』

今回の"What We Learned"ですが、「各カンファレンスが持つ『色』の違いはまだ生きている」です。近頃どのフットボールチームも使用するフォーメーションやプレーが似たり寄ったりでゲームを観ていて若干退屈に感じる事もままありましたが、今回のローズボウルでは両校が所属するカンファレンスの『色』を見事に打ち出しており、得点の展開はさておいてもフットボールをおさらいする観点から結構楽しめる事が出来ました。

Pac-12の『色』

Pac-12は温暖で降雨の少ない西海岸に所在する大学が多いため、伝統的にパス攻撃が盛んな事で知られています。古くはウエストコースト攻撃、近年ではノーハドルのスプレッド攻撃と全米に広まったこれらの戦術は、このカンファレンスが発祥と言っても良いでしょう。それに伴いQBに様々なプレッシャーをかけるため、パスラッシュやパスカバーのバリエーションが豊富である3-4隊型からの「攻撃的」な守備も発展してきました。

これらの戦術のぶつかり合いにおいては予想外の状況が発生し易く、選手個人の裁量が重要なポイントとなるため、このカンファレンスでは「アドリブ能力」の高い選手が重宝される傾向にあるのも何だかうなずけます。

Big Tenの『色』

かたやBig Tenはというと、カナダとの国境に近い寒冷地に所属校が集まっているため、ゾーンブロッキングによる「組織化」されたランプレーを軸としたボールコントロール攻撃が長年醸成され、それに従って守備の方も個人の役割を明確にした「組織化」が進みました(4-3隊型からのギャップ・コントロールも同カンファレンスのウィスコンシン大バリー・アルバレスHCが提唱)。最も伝統あるカンファレンス故に、所属校にも「横綱」フットボールへのこだわりがあるのかも知れません。ベルクマンの法則(**)の通り、選手も関取みたいなサイズばかりですしね…

(**)同種の動物でも高緯度になると身体がデカくなる摂理。ヘラジカとマメジカ、ホッキョクグマとマレーグマなどは好例。

最後になりますが、アイオワ大がRBをスクリメージラインより8ヤード辺り後方でセットさせているのを見て、オールドプレイヤーあるいはファンの皆さんは1990年代序盤に日本国内を席巻したオンワード・オークスのゾーンパワーを思い出されるのではないでしょうか。そんな懐かしさも感じさせてくれるゲームでした。



[了]

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