NFL2018年シーズン カンファレンス決勝 レビュー

2019年1月23日
今回は共に延長戦までもつれ込む「熱戦」となった各カンファレンス決勝についてレビューさせて頂きます。


NFC決勝 ロサンゼルス・ラムズ vs ニューオリンズ・セインツ

まずは、NFC決勝のハイライトから御覧下さい。
得点経過が一進一退の攻防を物語っていますが、最後はラムズの敏腕ウェイド・フィリップス守備コーディネーターの「策」がモノを言ったように思います。ペイトリオッツばりに鉄壁を誇るセインツのパスプロテクションに際して取った策のひとつが「ハエたたき」。ラッシュが届くかどうかに関わらず、ブリーズがパスを放るタイミングで守備ラインに手を挙げさせる形でレシーバーへのボールの到達を幾度となく阻止しました。さらに、レシーバー陣がカバーされた際にブリーズが頼りにしているRBアルヴィン・カメーラのチェックダウンに対しても、カメーラがルートに出るタイミングを遅らせる役割の選手を配置するひと工夫も。これらの「策」を凝縮しているのが、延長で繰り出された動画11:54ごろのインターセプトであります。決勝点となったのKグレッグ・ズーラインの57ヤードFGも凄かったですが、このプレイがゲームを決めたといっても過言ではないでしょう。

セインツ守備も当初懸念されていたトッド・ガーリーとC.J. アンダーソンのラムズRBデュオを計54ヤードに封じたのは天晴れでしたが、ラムズQBジャレッド・ゴフの「空襲」により309ヤードも奪われたため攻撃が序盤に作った「貯金」を削る羽目になってしまいました。加えてカメーラとマーク・イングラムのRBデュオの合計ラン獲得距離が46ヤードとセインツのラン攻撃も同様の渋チンさで、リードしている際のボールコントロールがままならなかったのも敗因のひとつ挙げられるように思います。活躍が期待された「曲者」QBテイサム・ヒルもヒッチパスでTDを奪うものの、そのあとの「アクセント」プレイに関しては塩を振りすぎて料理がしょっぱくなってしまった感が否めませんでした。

今回でラムズは通算4回目のスーパーボウル進出。1月26日に33歳となるショーン・マクヴェイはNFL史においても出場チームHCの最年少記録を大幅に塗り替えました。




AFC決勝 ニューイングランド・ペイトリオッツ vs カンザスシティ・チーフス

次は、AFC決勝のハイライトをどうぞ。
ペイトリオッツ攻撃は初っ端のドライブにおいて、15プレイを用いて何と8分05秒も費やしTDのフィニッシュ。先制点もさる事ながら、QBパトリック・マホームズ擁するチーフス攻撃からプレイ時間を奪うゲームプランの滑り出しは上々でした。その後もソニー・ミシェールとジェイムズ・ホワイトそしてレックス・バークヘッドのRBトリオのランで計177ヤードを奪い、終始ボールコントロールを敢行します。守備に関しても、フロント陣が効果的にパスラッシュをかけてマホームズに落ち着いてパスを投じる暇を与えず、チーフスのレシーバー陣と比較してタレント面で劣りながらも何とかDB陣が致命的なゲインを防ぎ、前半はあのチーフス攻撃を無得点に封じ込めました。

そんな状況からマホームズが演じた第4Qにおける怒涛のキャッチアップは、ある程度は予想していたものの実におったまげるくらい凄まじかったです。加えてランとパスキャッチ合わせて3TDを決めたデミアン・ウィリアムズの活躍も光り、不祥事でチームを離れたカリーム・ハントの代役を見事に果たしました。それだけに、NFL32チーム中31位の自軍の守備から最終的に援護を受けられなかったのが口惜しい限りです。自らの「腕」で延長戦までこぎつけたものの、その延長戦では先攻のペイトリオッツ攻撃がTDを決めるのをマホームズは見届けるしか出来ませんでした。悔しさ一杯にも関わらず、スタンドから手を差し伸べるファンにタッチで応えるマホームズの姿には何だか感じるものが。チーフスの運営陣が守備の再建に着手すればチャンスはまた巡ってくるはずなので、来シーズン以降も彼には頑張って頂きたいと思います。

ゲーム内容とは別に印象深かったシーンがふたつほど。ひとつは、何度もスーパーボウル進出を経験しているトム・ブレイディがあたかも初出場を決めたかのように被っていたヘルメットを放って歓喜を表した場面。このゲームもそうですが、2018年シーズンはここまでの道のりがかなり険しかった事がそうさせたのかも知れません。チームメイト達と嬉々として抱き合う姿は非常に印象的でした。もうひとつは、ビル・ベリチックHCが「Fxxk !」と言わんばかりにスポッター席からの画像を受信するタブレットを「またもや」思い切り投げつけていたトコロ。通信状態が安定しておらずスムーズに閲覧出来なかったためと思われますが、タブレットとは相当相性が悪いようです。まあ良きにつけ悪きにつけ、やはりこの二人はスポットが当たってしまいますよね。

ペイトリオッツはこれで通算11回のスーパーボウル進出。そのうち8回はベリチック政権というのも驚異的であります。




第53回スーパーボウルは17年ぶりの再戦

以上の結果よりメルセデスベンツ・スタジアムのフィールドに立つ2チームが決定しましたが、この組み合わせは奇しくも17年前のカードと同じであります。最後にその第36回大会を振り返ってお別れしたいと思います。
同時多発テロの影響もあって米国内が揺れている中で開催されたスーパーボウルでした。同時多発テロ自体が歴史の教科書に掲載される事柄であるのと同様にフットボールにおいても歴史的なゲームとして位置づけられていますが、この「史実」に登場した人物が再びスーパーボウルに姿を現します。そう、ベリチックそしてブレイディの御両名であります。(現在の所属は異なりますが、Kアダム・ヴィナティエリも現役で活躍中)

誰にも期待されずギリギリでドラフト指名され、当時リーグ最高給のエースQBドリュー・ブレッドソーの負傷欠場をリリーフして2001年シーズンを勝ち続け、下馬評では圧倒的に不利と言われたスーパーボウルにおいても爆発的な得点力を誇るラムズを降してチームに初めてヴィンス・ロンバルディ杯をもたらした痩せ身の若者は、今やNFLにおいて「Greatest Of All Time=GOAT」と呼ばれる存在になりました。

今大会のQBにおける対戦の構図は「帝王」ブレイディに対して若き「王子」ゴフが挑むと見る向きが多いかと思われます。筆者個人がAFC決勝終了後の様子を見る限り、苦闘した2018年シーズンを何とか勝ち抜いてきた事がブレイディに初戴冠当時のような「挑戦者」としての新鮮な気持ちを蘇らせているような印象を受けました。「GOAT」となっても一切の驕(おご)りは見られずまだまだ成長し続けるブレイディに感服しつつ、今日はここまでに致したいと思います。




[了]

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