2017年CFB注目QB vol.5 オハイオ州立大バッカイズ J.T. バレット

2017年10月26日
今回の2017年シーズンCFB(カレッジフットボール)注目QB(クォーターバック)は「いぶし銀」的な存在の「バランス系」より、BIG TENの強豪オハイオ州立大バッカイズ四年生J.T. バレットになります。彼の人となりが垣間見られる動画をまずはどうぞ。


Source:The Journey: J.T. Barrett on leadership on YouTube.com

 

 

優秀なフットボール選手である以前に、実年齢以上に落ち着いた青年である事を御理解頂けるはずです。練習中に後輩QBへアドバイスする口調はまさにコーチのそれであり、指導者としての将来性も申し分無いように感じられます。彼を見ていると、日本とアメリカの選手の差は運動能力以前に精神的成熟度に反映されているのでは…と痛感させられるばかりです。

アーバン・メイヤーHC(ヘッドコーチ)に見出だされ一年生で先発に抜擢されながらも、シーズンアウトの負傷を負ってしまう不運に。さらに皮肉だったのがバレットの後をリリーフしたカーデイル・ジョーンズ(現ロサンゼルス・チャージャーズ)でバッカイズは勝ち進み、CFP(カレッジフットボール・プレイオフ)制度下における初代全米王座を獲得。王座決定戦終了後、ノーパッドで勝利の紙吹雪を浴びていたバレットの複雑な表情が実に印象的でした。

負傷が癒えた二年生以降は先発の座を守り続けただけでなく、バッカイズを常にランキング上位へ導く活躍を。昨2016年シーズンはプレイオフに返り咲き再び全米王座をうかがいましたが、準決勝でクレムソン大によもやの完封負けを…こういった苦境が、バレットの人間的成長に対する「肥やし」となってきたのかも知れません。 オハイオ州立大を全米王座に導いたりハイズマン賞を獲得した先輩方が数多(あまた)いる中で、同校の歴史で最高のQBと評されているのも何だか納得出来ます。

次は、2017年シーズンのネブラスカ大戦キックオフ前のウォーミングアップの模様になります。

Source:J.T. Barrett pregame warmups at Nebraska on YouTube.com

 

 

プレイにおけるバレットの最大の特長は、とにかくハンドオフやパスの動きが非常に丁寧である事。こちらでも自分の動きを入念にチェックしている様子がヒシヒシと伝わります。特にリードオプションのハンドオフに関しては全米でも屈指の腕前で、日本でプレイしているQB諸氏には是非お手本として頂きたいものです。

そして、この後に臨んだゲームのハイライトです。

バレットにとって、準備したものがほぼ発揮された仕上がりとなりました。一点だけ欲張りな指摘をすると、バッカイズの強力な攻撃ラインに守られているという環境を考慮しなければならない事です。パスプロテクションが頻繁に「決壊」する状況下で「ファンタジスタ」なプレイをバレットが展開出来るかは、現段階において未知数であると言わざるを得ないでしょう。

現在バレットの頭の中は自分の手による全米王座奪還で一杯と思われますが、野次馬根性丸出しの外野としては卒業後の進路も気になるトコロ。ハイズマン賞候補としてリストアップされる一方で、運動能力やパス技術においてNFLでの活躍は厳しいと見る向きもあるようです。しかし、ユタ大時代のメイヤーHCによって育てられたアレックス・スミスが目下カンザスシティ・チーフス不動のエースQBであるのは周知の事実で、それゆえ「同門」の「弟弟子」であるバレットのポテンシャルを頭ごなしに否定するのは早計ではないかと感じます。

仮に選手としてNFLでは華開く事が無かったとしても、バレットが指導者として名をあげる「未来予想図」は必ず実現すると断言しても良いでしょう。バレットはそんな先の将来も期待させてくれる「選手」…いや「人物」であります。




[了]

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