「Snapshooters」其の五 リッチ・ギャノン

2016年6月5日
先日の練習にて「リッチ・ギャノンみたい」の形容に「それ、誰ですか?」という若手の声を聞き、またひとり名選手が風化してしまう危機感を受けて緊急寄稿致します。
久々の"Snapshooters"特集でレジェンド枠から第二弾、2000年代初頭のオークランド・レイダーズ黄金期を築いたQBリッチ・ギャノンのご紹介を。

リッチ・ギャノンのキャリア

若い頃は控えQBとしてパッとせず色々なチームを転々とするキャリアでしたが、三十代となり四つ目の所属であるレイダーズで先発に抜擢されてから開花、遅咲きアスリートの代名詞にもなりました。現在はCBSのコメンテイターを務めており、こちらの取材でも現エースであるデレク・カーの成長を評価しているようです。
この動画をチョイスしたのは、ギャノン氏の現役時代からレイダーズに在籍しているKセバスチャン・ジャニカウスキが後ろでパントを蹴っているレアなシーンがあったからという…

Source:Rich Gannon Sees Progress In Derek Carr on YouTube.com

 

 

単独試合で連続21回パス成功の記録樹立

第37回スーパーボウル出場、2002年リーグMVP選出、史上唯一の二年連続プロボウルMVP選出…そして当時のパスに関する様々な記録を作ったギャノンですが、その中でも単独試合で連続21回パス成功記録が個人的には印象深く残っています。

しかもこのゲームでは、レジェンドWRジェリー・ライスがNFL通算200TD獲得と総合獲得距離でNFL歴代首位に躍り出るという特大のオマケも付きました。

こちらの映像でも確認出来るように、ギャノンの最大の特長はその投球フォームにあります。サイドアーム、スリークォーター、オーバーハンドからなる三種類の投げ方を状況に応じて使い分けていると、当時のコメンテイター達も解析していました。

この三色フォームがあらゆるタイミングでボールを放る事を可能にさせ、さらにレシーバーの捕り易い球質も相まって驚異的なパスの成功率に繋がっていたように思います。まさに"Snapshooters"そのもの、認定に疑いの余地はありません。

Think Outside the Box!!

ギャノン氏はワシントン・レッドスキンズ在籍中に痛めた肩の手術で、一年間全くプレー出来ない時期を経験しました。

その期間において肩に負担のかからない投げ方を模索した結果、それまでのプロフットボールでタブー視されていたサイドアームを取り入れたのではないかと個人的にはニラんでおります。

サイドアームといえば、僕と同年代の皆さんでしたらヤクルトスワローズやシカゴ・ホワイトソックスで救援投手として活躍された高津臣吾さんを思い出されるかも知れません。

学生時代に窮屈だったオーバーハンドからサイドアームにフォームを変更してかなり楽に投げられるようになったという、高津さんのエピソードを以前聞いた事がありました。高津さんが四十歳を越えても現役選手として稼働されていた要因のひとつに、無理なく投げるスキルを身につけていた事も挙げられるかと思います。

Source:高津 メジャー初セーブ on YouTube.com

 

 

まさに「人間万事塞翁が馬」で、致命的な負傷による離脱は自己のスキルを根本から見直す良い機会となり、さらに既製概念の束縛から解放されるという「特典」もついてきます。不遇の期間をどのように捉えて如何に過ごすか…今ひとつ伸び悩むアスリートがブレイクスルー出来るポイントはそこにあるのではないでしょうか。ギャノン氏や高津さんの選手生活から、こういった事を学ばせて頂けるような気がします。




[了]

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