アメリカで復活した『ショットガンダンス』

2013年12月10日
2013年シーズンはチームの戦績が振るわないためハイズマン連続受賞が厳しくなってきたテキサス農工大QBジョニー・マンゼルですが、それでも僕の中でのファンタジスタ度はナンバーワンであります。

ショットガン テキサス農工大 ジョニー・マンゼル

その魅力は何といっても牛若丸を彷彿させるフットワークなのですが、今回はその秘密についてお話をさせて頂きたいと思います。まずはこちらの動画をどうぞ。マンゼルのセット位置に注目して下さい。

 

最近のショットガンを見慣れている皆さんは「おや?」と感じられるはずだと思います。それもそのはず、スクリメージラインから6ヤード辺りの距離に彼が立っているからです。

ショットガン オレゴンダックス マーカス・マリオタ

次に、同じく今をときめく二年生のオレゴン大QBマーカス・マリオタのプレーをどうぞ。

 

最近主流のスクリメージラインから4.5~5ヤードくらい離れるセットですよね。マリオタもその健脚が相手守備の驚異となっていますが、彼の場合はリードオプションのキープやQBドローなどデザインされたプレーでゲインしているのが殆どです。それに対してマンゼルは、相手守備ラインがパスプロテクションを突破したときのアドリブでその真価を発揮しています。感性の成せる業といってしまえばそれまでですが、ここで指摘させて頂いたショットガンのセット位置も大きく関係しているように思われます。
ショットガンのセット位置を深くする事で、攻撃側はふたつの恩恵に預かるといえるでしょう。
①守備ラインから遠ざかる事になり、「通常より」パスラッシュがQBに到達しにくくなる
②守備ラインのスタートする方向を若干外向きにするため、パスラッシュのレーンの間隔が「通常より」広がる
以上の結果、時間と空間においてQBに色々と仕掛ける余裕を持たせる事が出来るのです。
このカラクリ(?)が無ければ、『ジョニー・フットボール』の2012年ハイズマン受賞も叶わなかったかもしれません。

ショットガン 1984年 甲子園ボウル 日本大学フェニックス

若い年代の皆さんとは対照的に、このショットガンを見て僕と同じあるいはさらに上の年代の皆さんは懐かしく感じられたかも知れません。そう、QBの変幻自在なフットワーク、いわゆる『ショットガンダンス』で甲子園ボウルにおける多くの名勝負を演じた20世紀の日本大学フェニックスのショットガンです。関西学院大学ファイターズとの日本フットボール史に残るゲームとなった、1984年の甲子園ボウルをどうぞ。

 

レナウンローバーズの大先輩である日大QB松岡秀樹さん、そして僕の師匠である関学QB芝川龍平さんもセットは6ヤード近く離れていた事が分かります。今年の甲子園ボウルも同じ対戦となりますが、両校ともにショットガンフォーメーションでは現在主流のスクリメージラインから近いセットで臨むはずでしょう。日本のフットボール界で忘れ去られてしまった伝統芸が、今のアメリカで見られるのは何だか面白いですよね。

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