フットボール・エキペディア ヘルメット編

2018年5月10日
新しくスタートした企画、フットボール・エキペディアですが、今回はこの競技を象徴する装具であるヘルメットについてお話させて頂きます。

日常ではオートバイの運転や工事現場の作業にて使用されるヘルメット。世間では「メット」と略称されていますが、我々の業界では「ヘル」と呼ばれているのが一般的であります。それでは最初にヘルメットの変遷を追っていきましょう。19世紀末に耳の保護カバーのようなものを学生の選手が装着したのが、どうやらフットボール用ヘルメットの起源とされているようです。

ヘルメットの変遷・進化

Source:Through The Decades: Football Helmet on YouTube.com

 

 

僕が高校生の時はヘルメットのメーカーは2社のみであったため選択の余地が殆ど無い状態でしたが、現在は多数のメーカーが複数のモデルをリリースしているので実にバラエティに富んでいます。

どのメーカーのヘルメットも、シェルと呼ばれるプラスティックの外殻と内部の衝撃緩衝材で構成されているのが基本です。シェルに切り込みを入れたり分離させたり、緩衝材に空気を注入したり新素材を導入する等、各社とも頭部への衝撃を軽減する「色」をハッキリ出しているのがよく分かります

Source:Schutt F7 Helmet Video on YouTube.com

 

 

ここ最近ではソフトシェルクラブばりにシェルがたわむくらい柔らかいヘルメットも登場しており、NFLやメジャーカレッジで使用している選手もちらほら見られます。

Source:VICIS ZERO1 UNVEIL on YouTube.com

 

 

メディアでも取り上げられて御存知の方もいらっしゃるかと思いますが、ヴァージニア工科大の研究機関が安全基準を定めてヘルメットの「格付け」を行っております。近年リリースされたラインナップは高ランクに位置していますが、古いタイプのものに関しては「使用しちゃダメ!」とハッキリ「警告」しています。これに触発されて、NFLにおいても使用禁止ヘルメットなるものを以下のように定めました。

トム・ブレイディ、ドリュー・ブリーズ、フィリップ・リヴァースといったNFLのトップQB(クォーターバック)も長年愛用しているリデル社の「名機」とも言える「VSR-4」が今回の規制に引っ掛かってしまいました。ブレイディはシャット社「XP」とリデル社「レヴォリューション・スピード」がリリースされた際にそれぞれをゲームで使用しましたが、お気に召さなかったのか程なく「VSR-4」に戻した経緯があります。これからのシーズンにて、ブレイディ始め彼等がどのメーカーのヘルメットを選択するのかにも注目したいトコロです。

この規制は文字通り対岸の出来事ではなく、間違いなく我が国においても影響を与えるのではないかと思われます。これに乗っかって、Xリーグや学生リーグにおいても「VSR-4」等の旧式ヘルメット規制を始めるかも知れません。いきなりの「お達し」に面食らう事が無いよう、動画中にリストアップされた禁止ヘルメットを現在着用されているのであれば新調しておく事をオススメします。

ちなみに日本国内の相場では廉価なものでも3~4万円、上記の「格付け」で高ランクのものに関しては6~7万円を自分の懐から旅立たせる覚悟が必要であります。古代ギリシアの市民兵士や鎌倉幕府の御家人よろしく武装自弁の原則が一般的である我が国(フットボールに限らず他の競技も同様ですが…)にとって、こんな「高級品」を支給して貰えるアメリカの制度は実に羨ましい限りです。



フットボールと脳震盪

これだけヘルメットに関する話題が止まないのは、近年問題になっている脳振盪に対してフットボール業界全体がナーバスになっている事も関係しています。最新テクノロジーを搭載した高額なヘルメットを被れば完全に防ぐ事が出来るかと言えばそうとも限らず、また「ヘルメットなんかに頼らずガンガン首を鍛えればエエんじゃい!」とも言い切れず、なかなか「最適解」を見つけにくい厄介な問題です。

各方面で頭部を使わないヒットを一般的にする働きかけも見られますが、やはり最後は個人の意識にかかっているのではないでしょうか。右も左も分からないビギナーあるいは競技に慣れて余裕が出てきた中級者は注意散漫な状態でプレイし易いため、「不意打ち」のようにヒットを貰って罹患してしまうような気がします。サイドラインを跨いでフィールド内に入った瞬間から、とにかく全方位への「気」を抜かない事。この心構えが脳振盪を予防する「軸」になるかと思います。


ヘルメットを格好良く被るには…

最後にヘルメット着用に関する提言を。我が国では、頭でっかちなシルエットになるのを嫌がるせいか適正なサイズより小さいヘルメットを被る選手が多く見受けられます。安全性の観点からは勿論、バンパーと眉の間が空いているのとモンゴロイドの平たい顔が相まってイマイチなビジュアルを生成してしまう故、この被り方は避けたいトコロです。頭でっかちに見られたくないのであれば、がっつり鍛えるなり食べるなりで身体を大きくしてバランスをとっていきましょう。安全とカッコ良さの両方を意識してこそ、真に「イケてる」フットボール選手ですからね。

フェイスガードやチンストラップ等のヘルメットに付随する装具に関しては、またの機会にお話させて頂きます。今回はこの辺りで失礼を。




[了]

同じカテゴリーの記事一覧

ページのトップへ戻る