スーパーボウルでのショートパスによるTD史③ 第44回大会ニューオーリンズ・セインツのケースとその後の戦術の革新競争

2015年2月26日

第44回大会ニューオーリンズ・セインツのケース

QBドリュー・ブリーズとTEジェレミー・ショッキー

スーパーボウルでのゴール前のショートパスを追って参りましたが、今回はインディアナポリス・コルツとニューオリンズ・セインツによる第44回大会のケースについてお話させて頂きます。

ゲームブレイクのポイントが盛り沢山の試合でしたが、ここでは7:15のセインツQBドリュー・ブリーズがTEジェレミー・ショッキーへ決めたTDパスに注目してみましょう。



7:15 のTDパスに注目!

Source:Super Bowl XLIV: Saints vs. Colts highlights on YouTube.com

 

 

TEとCBとのミスマッチ

フォーメーションは一般的に3人のWRと1人のTEで構成されるトレイ隊型と呼ばれるものですが、パーソネル(ポジション構成の事、サッカーやバスケット同様にフットボールでも重要)が2人のWRに2人のTEである点にこのプレーのミソがあります。

TEであるショッキーは敢えてWRの位置に入り、日本の高校生でも用いるようなルックイン(スラントよりも早いタイミングで斜めに薄い角度で内側に入る)のルートをとって悠々パスをキャッチしています。

WRよりもガタイの良い選手が務めるTEというポジションの特長を活かして、いつもWRとしか対面していないCBとの体格的ミスマッチを狙ったという訳です。

ちなみに高校時代のショッキーは、WRほどスピードが無くTEにしては線が細いという評価を受けていたそうです。

そんな声をよそに持ち前のキャッチ力とアジリティ、そして反骨心を武器に名門マイアミ大へ入学し、NFLまでのぼり詰めた選手であった事も特筆しておきます。


TEとCBとのミスマッチの解消と、それを逆手にとったペイトリオッツオフェンス

この時期あたりからTEをWRのポジションに配置してCBとのミスマッチを狙う攻撃が一般的になってきましたが、それに呼応するように守備側もLBをCBのポジションに配置する策で対抗するのが近年のトレンドになりつつあります。

そしてそのトレンドを逆手にとったのは、まさに先日の第49回大会でニューイングランド・ペイトリオッツが挙げたこのTDパスです。

グロンクことTEロブ・グロンカウスキがフェイド(守備選手とサイドラインの間に出来るスペースを真っ直ぐ走る)ルートをとり、ロブにロブボールを投げるという駄洒落はさておき、見事ブレイディ様がパスをヒットしました。

自分の目の前あるいはすぐ後ろを通過する選手に対してアクションするのがLBのパス守備の特性であるため、いくら優れたLBと言えども走りながら奥のパスルートを守るのはかなりシンドいですからね…

こういった攻守間における戦術の革新競争を眺めてみるのも、フットボールの醍醐味ではないかと思います。




【了】

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