2018年シーズン、目が離せないアラバマ大の熾烈な「QBバトル」

2018年8月15日
2018年シーズンCFB(カレッジフットボール)の特徴的なトピックスとして、例年になく先発の座を巡る「QBバトル」の激しいチームが多く見られます。昨シーズン全米王者も例外ではなく、今回はアラバマ大クリムゾンタイドのケースについてお話させて頂きたいと思います。


二年生QB トゥア・タゴヴァイロア

最初に紹介する先発候補は、昨2017年シーズンCFP(カレッジフットボール・プレイオフ)チャンピオンシップにて劇的な決勝TDパスを決めて「ワンダーボーイ」となった二年生トゥア・タゴヴァイロアになります。

185cmとQBでは小さい部類に入りますがフットボールセンスの塊のような選手で、その機動力と左腕から繰り出される正確なパスを見た実況の方が「まるでスティーヴ・ヤングのようだ」と評したのも何だか頷けます。タイブレイクまでもつれ込んだCFPチャンピオンシップのあの切迫した状況で勝負を決めたトコロから、精神的なタフさと「何か」を持ち合わせている事も実証済み。そのキャリアにおいてアラバマ大の看板を背負う事が期待される逸材であります。

彼が高校生の時にDr.FOOTBALLでお話させて頂きましたが、タゴヴァイロアの故郷はハワイ州。今回の帰省は、全米制覇をお土産とする「凱旋」となりました。

三年生マッチョ系QB ジェレン・ハーツ

そして次の先発候補は昨シーズンの注目QBでも紹介させて頂いた、フィジカルの強さを前面に押し出す「マッチョ系」三年生ジェレン・ハーツになります。

Source:Jalen Hurts ll Danger ll Highlights ᴴᴰ on YouTube.com

 

 

一年生の時から先発を張って2年連続全米王座を獲得出来る位置までアラバマ大を導いたにも関わらず、CFPチャンピオンシップにて途中降板を命じられ、かつ交代した後輩に全てを持っていかれた状況に内心穏やかでないのは容易に察する事が出来るでしょう。

ゲーム後にコーチ陣から何のフォローも無かった事に対して不信感を抱いている、というハーツ自身の談話が報じられているようです。こちらの動画では同じ「マッチョマン」であるシャノン・シャープが興奮気味にその事について語っています。ハーツ(Hurts)だけに画面下の見出しにも「HURT FEELINGS(傷付いた気持ち) 」なんて駄洒落が飛び出す始末で…


ニック・セイバンHCの葛藤(?)と不名誉な伝統。

この「QBバトル」に関しては、取り敢えず先発を任せてみたら予想以上の活躍をしたハーツよりも、アラバマ大が「大黒柱」としての期待を持ってリクルーティングしたタゴヴァイロアの方に分があるように感じられます。アラバマ大を統べるニック・セイバンHCは悩ましい状況下にあると報道されていますが、存外セイバンHCの中では既に解答が決まっているのではないでしょうか。

その「既定路線」に抗うのはなかなか難しい故、ハーツは転校によって新たな活躍の場を見出すのがベターのように思います。今シーズンのプレイ権利を放棄すれば、あと2年間は大学でプレイ出来ますからね。昨シーズンの「アイアンボウル」に敗れたため公約通り宿敵オーバーン大のジャージィに袖を通すという罰ゲームを甘んじて受けましたが、ひょっとするとこの動画は何かの暗示となるかも知れません。ライバル校に移ってリベンジするという「構図」は確かに興味深いです。

かなり余談になりますが、アラバマ大の先発QBについて興味深い…というか残念な「伝統」をひとつ。

セイバンHC就任以前から幾度となく全米王者に輝いているアラバマ大ですが、殆どの先発QBがNFLへ進んだ後は鳴かず飛ばずでキャリアを終えています。こちらの動画でも述べられている通り、全米王座に導いた選手で「例外」となるのはスーパーボウルも制したジョー・ネイマスくらい。現役選手ではA.J. マキャロンが新天地バッファロー・ビルズの「QBバトル」において奮闘していますが、ここで先発を勝ち取る事が出来なければ「伝統」を破るのも中々シンドくなるように思います。

現段階のCFBにおいてタゴヴァイロアとハーツの二人が紛れもなく優秀なトップQBである事に疑いの余地はありませんが、卒業後のキャリアにおいてこちらの「伝統」が立ちはだかるのは間違いないでしょう。その「伝統」を乗り越えられるよう、彼等には王者の立場に甘んじず自己の研鑽を続けて頂きたいものです。



[了]

同じカテゴリーの記事一覧

ページのトップへ戻る