クリス・ミラー。「スモール」フットボールを支える名将。

2017年6月16日
皆さん、クリス・ミラーの名前を御存知でしょうか?

近年のような強豪ではなかった頃にオレゴン大ダックスで先発QBを務め、NFLではアトランタ・ファルコンズにドラフト指名され看板選手として活躍。プロの晩年は度重なる脳震盪に悩まされたため、NFL在籍10年で選手生活にピリオドを打ちました。その後は指導者の道を選択し、アリゾナ・カーディナルズでQBコーチを務めましたが、現在は地元オレゴン州に戻って高校生の指導にあたっています。

こちらは、自身のオレゴン大時代を中心にミラー氏が色々と振り返るインタビューであります。現役時代は貴公子然のイメージでしたが、今や良いおじさんになってしまいましたね。冒頭にはオレゴン大OBでNFL選手だったJ.J. バーデン氏やデレク・ラヴィル氏の談話や、かつて日本で開催されていたCFB公式戦の模様(なぜか谷村新司さんが映っているという…)など、懐かしく感じる映像が盛り沢山です。

高校生QBを集めたクリニックの模様がこちらになります。レシーバーがいる方向に合わせて投げる体勢を整える事をこちらでは強調されているようです。


こちらは個人レッスンの模様です。ミラー氏からの「Good!」や「Nice!」の優しい声かけが心地好く、選手もノリノリになれますね。

御覧の通り指導を受けている彼は相当上手いのですが、調べてみるとスモールカレッジにしか進めなかったようで…アメリカのハンパない層の厚さをここでも痛感させられました。また、男子がふざける時に「カンチョー」をかます習慣は洋の東西を問わないという事が確認出来る(3:02頃)、文化人類学的に貴重な資料となる動画でもあります。

Source:Billy Green QB Workout With Chris Miller on YouTube.com

 

 

こちらも個人レッスンの模様になります。

パスラッシュを紙一重でかわす、あるいはハンズアップした上からパスを通すドリルは共通して行われていますね。なかなか自分の快適な体勢で投げさせて貰えないNFLを経験したミラー氏だけあって、こういったドリルを重要視しているのではないでしょうか。

Source:Tanner Wright Workout with Chris Miller 2014 on YouTube.com

 

 

ミラー氏は現在こちらのウエスト・リン高校でHCを務めており、同校のフットボール部をオレゴン州内の強豪に育て上げています。こちらは2016年シーズンのディヴィジョン王座を獲得した時のゲームの模様です。お約束のゲータレード・シャワーにミラー氏も御満悦ですね。

全国的に注目されていた元NFL選手にも関わらず、大きくメディアに取り上げられる訳でも尋常でないサラリーを貰える訳でもない道をミラー氏は選択しました。やはり軍隊の「司令官」や企業の「上司」という感じのNFLのコーチ業(最近のメジャーカレッジもそれに近いような気が…)よりも、発展途上の若者を育てて故郷に恩返しする事にやり甲斐を感じた結果のように感じます。

このようにローカルで活動をしていても、ミラー氏がかつての実績や栄誉に浸る「過去」の人物ではなく、前を向いて新しい道を切り開く「現在進行形」の人物である事に疑いの余地はないでしょう。

マスメディアに取り上げられるNFLやCFBだけがアメリカのフットボールではありません。様々なメディアが存在する現代の恩恵にあずかって、こういった「スモール」フットボールにも注目して頂けると幸いに思います。


[了]




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