オリンピックに送り込まれたフットボール界からの刺客

2016年8月11日
いよいよ開催のリオ・デ・ジャネイロ五輪でありますが、今大会でもアメリカ代表はフットボール界から刺客を送り込んでいます。

リオ・デ・ジャネイロ五輪と110mハードル代表、デヴォン・アレン

110mハードル代表のデヴォン・アレンはオレゴン大の三年生で、フットボール部にもWRとして籍を置いています。まずはこちらのPac-12のレースにおける走りっぷりをどうぞ。素人目に見ても速いですよねー
開催期間中に注目しておきたい選手ですが、かつて五輪代表のフットボール選手がNFLに進んで活躍する例は歴史的にもチラホラ見られます。

Source:Highlight: Oregon’s Devon Allen breaks Pac-12 track & field championship and 2015-16 NCAA record… on YouTube.com

 

 

 

東京五輪と男子100m金メダリスト、ボブ・ヘイズ

その代表といえば、1964年東京五輪で男子100mの金メダルを獲得し、当時の人類最速を誇ったこちらのボブ・ヘイズを真っ先に挙げられるでしょう。ホント、「弾丸」とはよく言ったものです。
自己ベストが追い風参考ながら9秒90で、今大会の日本代表である桐生選手が同じく追い風参考で9秒87という事を考えると、50年経った今でも規格外であり続けているのには恐れ入ります。

それでもって、NFLではダラス-カウボーイズにでWRとして活躍。スーパーボウル制覇に貢献しただけに留まらず、プロボウルにも三度選出。これだけのディープ・スレッドなので、かつては獲得距離に関するチーム記録を幾つか保持していました。現在のNFLの選手で言うと、カロライナ・パンサーズのテッド・ギン Jr.が近い感じでしょうか。同じく身体がしっかりした韋駄天タイプですよね。

Source:BOB HAYES NFL HALL OF FAME AND AMERICAS TEAM ON SPEED EXPLOSION RECEIVER on YouTube.com

 

 

 

モスクワ五輪。4×100m代表 ウィリー・ゴールト

お次は1980年モスクワ五輪でカール・ルイスと一緒に4×100mリレー等で代表に選出されたウィリー・ゴールトですが、テネシー大ヴォランティアーズ時代の見事なキックオフ・リターンTDをどうぞ。

NFLではシカゴ・ベアーズにてスーパーボウル制覇を経験し、移籍したロサンゼルス・レイダーズ(当時)においてもWRとして中核を担っていました。ゴールトの存在で、プロとカレッジの両方で名誉の殿堂入りを果たしたあのティム・ブラウンが控えに甘んじていた位ですからね。

厳密に言うとモスクワ五輪をアメリカがボイコットしたため陸上での五輪を経験出来なかったのですが、仮に出場していたらリレーで金メダルを獲得していたに違いないとも言われています。

Source:Willie Gault 1981 Kickoff Return vs. Wisconsin on YouTube.com

 

 

 

ロサンゼルス五輪代表。砲丸投げで銀メダル マイケル・カーター

同じ陸上でも今度は投擲種目の選手に注目してみましょう。サンフランシスコ・49ersでNTとして活躍したマイケル・カーターは、1984年ロサンゼルス五輪の砲丸投げで銀メダルを獲得しました。

あの鉄の塊を20m以上も飛ばすとは…投げ方を御覧になっても分かるように、ただ膂力(りょりょく)があるだけでこうはいかないはずです。類稀なる運動能力の持ち主であった故に、NFLでも長年ロスターに残る事が出来たのではないでしょうか。

Source:Michael Carter 21.09m on YouTubu.com

 

 

 

ソルトレイクシティ五輪、トリノ五輪。モーグル代表 ジェレミー・ブルーム

冬季五輪のケースについてもお話しなければならないでしょう。彼の名前はジェレミー・ブルーム。2002年ソルトレイクシティ五輪と2006年トリノ五輪の両方にモーグル代表として出場しています。トリノ五輪決勝での滑りをどうぞ。

カーレーサーの佐藤琢磨選手っぽい雰囲気ですが、スピード感を追求する人はそんな顔立ちになってしまうのでしょうか…

Source:Jeremy Bloom 06 Finals on YouTubu.com

 

 

フットボールではコロラド大バッファローズで駿足のWR/KRとして活躍しました。こちらはフロリダ州立大セミノールズ戦での、スキニーポスト・パターンによる独走TDの模様です。

当時指揮されていたフロリダ州立大のボビー・ボウデンHCも、自軍のDBが見事にぶち抜かれるのを目の当たりにして御機嫌45°でいらっしゃるのがよくわかります。

Source:Jeremy Bloom burns Florida State on YouTube.com

 

 

今度はオクラホマ大スーナーズとのBIG 12決勝戦(まだコロラド大が所属していて同カンファレンスも名前通り12校で構成されていたので、決勝戦を開催出来ていました)で飛び出したパントリターンTDになります。自軍のパントカバーチームのやられっぷりに、オクラホマ大のボブ・ストゥープスHCもお冠なのががっつり確認出来ます。

雪上とカレッジのフィールドではこれ程の活躍を見せていたブルームですが、NFLに関してはフィラデルフィア・イーグルスとピッツバーグ・スティーラーズ合わせて2年ちょっとの在籍で姿を消す事になりました。

ロサンゼルス五輪。4×100m金メダリスト ロン・ブラウン

最後はこちらのロン・ブラウンで、1984年ロサンゼルス五輪の4×100mリレーで金メダルを獲得した選手であります。NFLでは、当時ロサンゼルスを本拠地としていたラムズとレイダーズにWR/KRとして活躍しました。僕と同年代またはそれよりも上の皆さんにとって、今年そのラムズがロサンゼルスに戻って来るのも何だか感慨深いですよね。

Source:Ron Brown Highlights from the 1980’s on YouTube.com

 

 

 

マルチアスリートという「挑戦者」。

やはりスプリンターがWRとしてフットボールに戻ってくるケースが殆どではありますが、ただ足が速いだけではなく、リリースや守備を読む技術が現代のWRに求められる事は過去にもお話させて頂きました。

何よりもヘイズが活躍した50年前のDBと比べて、その体格とスピードそして技術が格段に向上している事を無視は出来ないでしょう。それゆえ、彼等にマッチアップするための技術習得にWRも時間を費やさなければならなくなりますからね。

こういった点から、専任でプレーしている選手と比べてフットボールに割く時間の少ないマルチアスリートが今後NFLで活躍するのはますます難しくなるとは思いつつ、今大会に出場するアレンを始め新たなる「挑戦者」を見守っていきたいのも正直な気持ちであります。




[了]

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