東京五輪。スタジアム建設についてNFLからのヒント

2015年8月14日
我が国ではスタジアム建設の議論が盛んに行われていますが、その点で一日…いや五十年くらいの長があるNFLのフランチャイズが色々なヒントを教えてくれるのではないかなーと思う今日この頃です。

NFLのフランチャイズも新スタジアム建設ラッシュで、その中で現在注目されているのがミネソタ・ヴァイキングスの新スタジアムであります。

まずは再建のきっかけとなった、旧ホームスタジアムであるメトロドームの屋根が積雪によって崩壊するショッキングな模様をどうぞ。CGや特撮などの類ではなく、紛れもなく実際の映像です。そりゃあアナウンサーも"Wow"と漏らしてしまいますよね…

東京ドームはこちらのメトロドームをモデルに建設されたため、日本にいる我々でもこの凄まじさをイメージしやすいのではないでしょうか。


そしてこちらは2017年に完成予定である、ヴァイキングス新スタジアムのイメージ動画です。完成までの間ヴァイキングスは、BIG TENのいぶし銀ならぬ金であるミネソタ大ゴールデンゴファーズのホームスタジアムを間借りしています。

外観に関してはトンガリしている部分で独自の色を出しているものの、近代美術館を思わせる全体的にシックな印象を与えてくれます。

特筆すべきはETFTというポリマー製の天井で、採光性を高めると同時に光を分散させて影が出来にくくなる素材との事です。これはTV中継を観ている側にとって優しい構造だと思います。

そして最近のNFLスタジアムのトレンドである天井の開閉機構を諦めた分、入口にある複数の門(?)を開閉式にして外気が入るようになっているようです。(さすがに真冬は完全に閉め切ると思いますが…)

用途の方ではメインのフットボールはもちろん、サッカーや野球などの他競技に音楽のコンサート、加えてダートレースの開催にも対応出来るそうです。


東京オリンピックの会場となる新国立競技場を他のフィールドスポーツの試合会場として利用出来るようにしようという意見がにわかに出ているようですが、かつてNFLでもオリンピック会場をホームスタジアムとしていたチームが存在しました。

1982年から1994年シーズンまでロサンゼルスを本拠地としていたレイダースが、そのチームであります。

こちらは同じくロサンゼルス拠点のチームであるラムズとの1994年のゲームですが、皆さんご存知の通り、現在ではオークランドとセントルイスにそれぞれ居を移しています。

Source:Los Angeles Raiders vs Los Angeles Rams 1994 on YouTube.com

 

 

ロサンゼルスからNFLチームが姿を消してしまった理由は色々議論がありますが、フットボール専用スタジアムではなかった事(LAラムズのホームも野球と兼用)もネックになっていたのではないかなーと感じます。

陸上競技と長方形フィールド競技ではかなり使い勝手が違いますからね。かつて兼用スタジアム全盛だったNFLでも、たった1チーム以外は全て専用スタジアムで試合開催をしています。(その1チームがオークランド・レイダースというのが何とも口惜しい限りで…)

スタジアムは一度建築すると恒久的に使用出来ると思われがちですが、アメリカでは30年~40年位が寿命という考えが一般的で、解体しないにしても大幅な改築がこのサイクルで行われているようです。

競技の質はもちろん、社会や経済の状況が2次曲線的に変化している以上、こういった潮流はごく自然であるような気がします。

10年ほど前に縁あって、旧国立競技場の裏側を覗かせて頂ける機会がありました。1964年開催の東京オリンピック時に建造された状態そのままであるため、関係者やマスコミの導線が不便で仕方ないというお話をうかがった事をハッキリと覚えています。

どうも土地という資源に乏しいという点で、我々日本人は何とか一つの空間で済まして出来る限り長く使おうとする性から逃れられないのかも知れません。寝食のスペースを兼用する和室などは、まさにそれを象徴しているように思います。

その反面、鎌倉時代に吉田兼好や鴨長明が提唱した、形あるものはいつか消えてしまうという無常観も日本には存在していた訳で…ある意味、この人達の方が現代の我々よりもよっぽどアメリカ的だったような気がします。

今回の騒動で、我々のスタジアム観を転換させる良い機会になるのではないかなーと僕は前向きに捉えております。




[了]

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