大荒れのカレッジフットボール。ミシシッピに上陸した二つの台風の目

2014年10月24日
CFP(カレッジ・フットボール・プレイオフ)元年となるNCAAカレッジフットボール2014年シーズンは、現在大荒れの様相を呈しています。

大荒れのNCAA カレッジ・フットボールランキング 第8週

第8週に発表されたランキングは実に衝撃的でした。首位にその名を刻んでいたのは、昨年の覇者フロリダ州立大セミノールズや、SECの強豪オーバーン大タイガースにアラバマ大クリムゾンタイドでもなく、SEC西地区のMSUことミシシッピ州立大ブルドックスであったからです。

そして2位フロリダ州立大に続く3位にもサプライズが。同じくSEC西地区所属のOle Missことミシシッピ大レベルスで、シーズン序盤で高ランクに位置していた学校(僕が推していたオクラホマ大も含めて…)は後塵を喫している形となっています。

SEC西地区のドアマット的存在(上位チームにとって勝ち星稼ぎの対象)だった二校が、どんなゲームを展開しているのか注目してみたいと思います。




編集部注) 2014年NCAAカレッジフットボール APランキング 第8週時点
1 Mississippi State   ミシシッピ州立大ブルドックス
2 Florida State  フロリダ州立大セミノールズ
3 Ole Miss  ミシシッピ大レベルズ
4 Baylor  ベイラー大ベアーズ
5 Notre Dame  ノートルダム大ファイティングアイリッシュ

ミシシッピ州立大ブルドックスと、チームを牽引するエースQB ダク・プレスコット

MSUの要はQBダク・プレスコットに尽きます。フィジカルの高さでチームを牽引し、今やハイズマン賞候補にも挙げられる勢いです。まずは彼のインタビュー動画で人となりをチェックしてみましょう。

Source:Dak Prescott: Family, Faith And Football (Full Feature HD) on YouTube.com

 

高校時代にLSUことルイジアナ州立大タイガースからも勧誘されていたようですが、やっぱりエキセントリックなレス・マイルズHCを敬遠したのでは…
そして昨年末に最愛の母上を癌で亡くしてしまった事が、彼の人間的成長に大きな影響を与えたのは間違いないはずです。

こちらは、第7週のオーバーン大戦の模様になります。

ガッシリした体躯から繰り出されるトルクのある走りは、守備選手からするとかなりの脅威であるはず。NFLの選手に例えると、かつてミネソタ・ヴァイキングスを牽引したダンテ・カルペッパーに近いタイプではないでしょうか。そしてスローイングの分類で言えば、完全な"puncher"であると思われます。膂力(りょりょく)を活かして「ピュッ」と投げるスタイルですね。

参考までにカルペッパーの懐かしいプレー動画もどうぞ。ちょくちょく顔を出しているWRランディ・モスも若いですねー

ミシシッピ大レベルズと、チームを牽引するエースQB ボー・ウォレス

次に紹介させて頂くOle Miss躍進の原動力となっているのは、四年生QBボー・ウォレス。まずは、彼が女性レポーターにフットボールの投げ方をレクチャーしている所からどうぞ。

こちらのウォレスの姿を見て、伝説的なロックバンドであるニルヴァーナのフロントマン、故カート・コバーンを思い出された方も多いのでは…

Source:Nirvana MTV Unplugged REHEARSAL – Full on YouTube.com

 

こういう髪型だから似ているように見えるのか、それともこんな顔つきの人はロン毛を好む傾向にあるのか分かりませんが、いずれにしてもカリスマ性があるルックスなのかも知れません。

そしてこちらが、第6週にアラバマ大クリムゾンタイドを破ったウォレスのパフォーマンスになります。この時はしっかり散髪していたようですね。

Source:Bo Wallace vs. Alabama (2014) on YouTube.com

 

とにもかくにも、バックショルダーパス(DBと併走しているWRの背中へボールをぶつけるように通すパス)の精度が半端なく高い事にビックリしました。長いパスと組合せればレベルの高いDBを相手にするほど効果を増すので、アラバマ大セカンダリーが手玉に取られた理由が大変よく分かりました。加えてプレスコットと同様に走る方も達者ですが、彼の場合は力強さよりも軽やかな印象を受けます。

短いパスでコツコツなんてケチ臭い事を言わず、このまま長いのとバックショルダーの押せ押せパッシングを貫いて欲しいものです。野球に例えると、速球とフォークボールでピッチングを組み立てる感覚に似ているかも知れません。

投げ方を見ると、かつてニューヨーク・ジャイアンツやテネシー・タイタンズで活躍したケリー・コリンズを思い出しました。肩の柔軟性が高く「ブォン」と腕をしならせているのと、球離れまでの時間を作ってコントロールしている点で、"slinger"の要素を持った"launcher"であるように感じました。あえて新しい分類をするならば、"slinger-launcher"とでも言いましょうか…

またまた参考までにケリー・コリンズのタイタンズ時代のハイライトをどうぞ。繰り返しになりますが、肩の可動範囲が実に広い選手でした。

Source:08-09 Kerry Collins HL Part 1 on YouTube.com

MSU、Ole Miss両校の今後のスケジュール

そして、今後の両校のスケジュールにも目を向けていきたいと思います。
MSU(ミシシッピ州立大ブルドックス)の方は序盤にSEC西地区の強豪をあらかた片付けてしまったので、11月15日にアラバマ大戦が山場となる以外は比較的イージーな日程であります。

一方Ole Miss(ミシシッピ大レベルズ)はというと、まだ10月25日にLSU戦、そして11月1日にオーバーン大戦を控えているため、この二週間はかなり濃密な時間になるはずです。

そしてレギュラーシーズン最終戦となる11月29日には、両校の直接対決が行われます。どちらも全勝ないし1敗をキープしている状態であれば、恐らく地区優勝決定戦となる事でしょう。昨年は大盛り上がりだったアラバマ大とオーバーン大の「アイアンボウル」も、今年はただの定期戦になりそうです…

パリティ(戦力均衡)とカレッジフットボール

カレッジフットボールにおいてこういったアップセットが頻繁に起こり得るのは、ひとえに選手の奨学金枠が各校一律である事に尽きると思います。どうやらパリティ(戦力均衡)はNFLだけの専売特許ではなさそうです。

対照的に、上位と下位の顔触れが慢性的に変わらず「三連覇」や「四連覇」出来るチームを生んでしまうような団体たるや、血行障害で壊死を起こしているくらい不健康な状態ですよね…



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