第51回スーパーボウル。トム・ブレイディとマット・ライアンを指導したトム・ハウス

2017年2月21日

スローイング指導の大家 トム・ハウス 

歴史に残る大熱戦だった第51回スーパーボウルでしたが、その名勝負を演出したニューイングランド・ペイトリオッツとアトランタ・ファルコンズ両軍の先発QB(クォーターバック)がある共通点を持っているのを御存知でしょうか。

それは同じコーチからスローイングの指導を受けている事で、その人物の名前はトム・ハウス-"the Ryan Express"の異名を持つ速球王ノーラン・ライアンを始め、メジャーリーグの名だたる投手の育成で有名な方であります。「投球」という同じスキルを要する事もあり、最近ではフットボールのQBの指導も精力的に行っていらっしゃるそうです。

その影響力たるやNFLにも及んでおり、 2016年シーズンに関しては開幕時に先発だったQBの32人中13人がトム・ハウスの指導を受けていたとの事。

先述のスーパーボウルで競演したトム・ブレイディとマット・ライアンの二人はもちろん、アレックス・スミス、ドリュー・ブリーズ、ジョー・フラッコ、イーライ・マニング、カーソン・パーマー、タイロッド・テイラー、そしてこちらの動画でも紹介されているアンディ・ダルトン等々…コントロールが良くパスの成績も安定している面子ばかりですね。

トム・ハウスのスローイングドリル

今度は、トム・ハウス指揮の下で行われている若年層のQBを対象にしたセッションのひとコマをどうぞ。

両手でボールを持った状態から壁に向かってボールを「当てる」ドリルは、特に興味深く感じました。背中を固定して身体の横幅全体を使って投げる事で、効率よくボールに力を伝えてコントロールを安定させる効果が得られるように思います。

トム・ハウスの指導を受けたNFLのQBの殆どは五分丈のアンダーシャツを着用していますが、このドリルでポイントとなる背中の固定を補助するためではないかとニラんでいます。言うなれば、ベンチプレスの選手がベンチシャツを着用するニュアンスに近いのかも知れません。

また、利きと反対の手にボールを持って何度となくスイングするため、それが実際のスローイングに染み付いている選手も見られます。アレックス・スミスやアンディ・ダルトンのスローイング中における静止画像を見ると、左手が何かを握っているような形になっているのでご確認して頂けると幸いです。

この動画の後半に登場する、現クリーヴランド・ブラウンズ所属でQBからWR(ワイドレシーバー)に転向したテレル・プライアーも実はトム・ハウスの門下生。ワイルドキャット隊形でQBを務めた際、今季ブラウンズで先発したどのQBよりもキレイにボールを投げているという皮肉な現象も見られました。

Source:3D QB Training at USC on YouTube.com

 

 

トム・ハウス流 QBの肩と腕のウォーミングアップ


Source:Quarterback Shoulder and Arm Care Warm Up on YouTube.com

 

 

こちらはトム・ハウス監修の肩周りのエクササイズの一部になります。

タケちゃんマンのナハナハを彷彿させる(かなり古い…)小刻みな動きを始め、静的な柔軟性に留まらず動作に即した柔軟性と力の入れ具合についても強調している所がユニークです。

競技経験者による指導は長年の蓄積によって普遍的な技術が醸造されるメリットがありますが、マンネリ化してしまいブレイクスルーの可能性を奪ってしまうケースも多々見られます。そこで他分野において確立された客観的理論の「新しい風」が吹き込むならば、想像だにしなかった化学変化を競技にもたらしてくれるかも知れませんからね。

何はともあれQBのスローイングがゲームの面白さに影響するといっても過言では無い故、国内で頑張っているQB諸氏がブレイクスルー出来るきっかけとなれば幸いに思います。



[了]


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