カレッジからNFLへ -チップ・ケリー編-

2014年1月1日
オレゴン大から電撃的にフィラデルフィア・イーグルスで指揮をとる事となったチップ・ケリーHCですが、そのノーハドル攻撃がNFLでどれだけ通用するかに注目が集まっていました。

チップ・ケリーHC、NFLキャリアデビュー

まずは2013年開幕戦となったワシントン・レッドスキンズ戦をどうぞ。
そのノーハドル攻撃によって前半だけで50プレー以上も行われた事が評論筋では強調されていましたが、筆者はそのプレー構成にも巧みさを感じました。ハンドオフフェイクからのTEブレント・セレックへのポップや、同じくハンドオフフェイクからのWRデショーン・ジャクソンへのバブル等の素早いプレーアクションパスで、イーグルス攻撃は前半のゲームをコントロールしています。

感覚としてはIフォーメーションからのダイブフェイクのパスあるいはオプションのようなもので、カレッジどころか日本の高校生でも見られるようなシンプルなプレーと言っても差障りはないでしょう。ところが、これらをNFLで生き残っている超人達が行うとかなり意味合いが異なります。彼等がボールキャリーした時に守備陣へ与える脅威が尋常ではないため、パスを決められている以上はタックルボックスから外にいるレッドスキンズのセカンダリーもレシーバーから意識を外す事が出来なくなりました。
前半でかなりのリードを得たイーグルスが後半に行わなければならないのが、ボールを保持して時間を出来るだけ消費する事。そこで飛び出たのは、第3Q開始早々のTDとなるRBルショーン・マッコイにハンドオフした単純なゾーンプレーです。前半のプレーアクションパスの伏線が効いているせいか、DLはパスラッシュ用のアタックを行ってランニングレーンを広げてしまい、LB以降のセカンダリーは通常より広がってアラインしたためプレーリードした後のパシュートがかなり遅れてしまいました。もっぱら何でも屋的な役割が多くてロングゲインをするのが珍しいマッコイでしたが、このような環境下であったため結局この試合では180ヤード以上をランプレーで獲得する事になります。

RG3ことロバート・グリフィン三世率いるレッドスキンズ攻撃も怒涛のキャッチアップを見せるも、残り時間を奪われたのが影響してケリーHCに初陣勝利をプレゼントしてしまいました。




チップ・ケリーのオレゴン大ダックスでのラストシーズン

今度は、ケリーHCがオレゴン大で指揮をとったラストシーズンである2012年のUSCこと南カリフォルニア大との一戦をどうぞ。

 

アウェイでの大一番の先発QBを任されたのは、当時一年生のマーカス・マリオタでした。才能溢れる有望な選手といえども一年生であれば、まずいプレーを行った後の精神的ダメージを自力で処理するのはかなり至難の業です。そこで、ノーハドル攻撃によって絶え間なくタスクを命じ落ち込む暇を与えず、単純なプレー構成で「これだけに集中すれば良い」と言いつけてプレッシャーを緩和したからこそ、一年生QB率いる攻撃であっても第1Q初っ端からエンジン全開で行けたのではないかと思います。


カレッジからNFLへ

カレッジフットボールからNFLに鞍替えしたコーチは今までに数多いますが、その中で成功を収めているのはほんの一握です。ケリーHCを1シーズンでそのカテゴリーに入れるのは早計であるかも知れませんが、カレッジにおいてシンプルなスキームを採用していてそのままNFLに持ち込んだ成功例は他にも見られます。一方で、カレッジ時代に採用していた「プロ」向きのスキームを持ち込んで実際の「プロ」の世界では失敗してしまった逆説的なケースが多くあるのも事実です。これらに関しては、また別の機会にお話させて頂きたいと思います。



[了]

同じカテゴリーの記事一覧

ページのトップへ戻る