スーパーボウルでのショートパスによるTD史②  49回スーパーボウル。シーホークス攻撃最終プレーの背景 vol.3

2015年2月24日

42回大会。トム・ブレイディとランディ・モスのTDパス

スーパーボウルでのショートパスによるTD史を追うならば、第42回大会のこのプレーをスルーする訳にはいきません。

奇しくも第49回大会と同じフェニックス大学スタジアムを舞台に、当時無双であったQBトム・ブレイディとWRランディ・モスのニューイングランド・ペイトリオッツのホットラインが決めたTDパスをどうぞ(動画は恐らくスペイン語圏の中継かと…)。

右側二人のWR(サイドライン側がランディ)が同じようにスラントのルートを走っている訳ですが、ランディのリリース(走り方)に注目してみましょう。ランディが身体能力だけでプレーしていた選手でない事をご理解頂けると思います。

紙上のようにただ直進して斜め内側に走るだけでは、内側でスラントしているWRや守備選手と重なってしまい、QBの目線からは投げるスペースが全く無くなってしまいます。


Source:TD Randy Moss (SuperBowl XLII) on YouTube.com

 

ここでランディは対面するCBのサイドライン側を抜くようなフリをして、CBが身体のバランスを崩したのと内側のスペースが出来た頃合いを見てチョロっとスラントして悠々とフリーになります。しかも大舞台での決勝(になる予定だった…)TDパスゆえに、両手・両腕・身体の五点キャッチという慎重さ。

ランディのきめ細かいフットボールスキルの全てが凝縮しているプレーといっても過言ではありません。こんな素晴らしいリリースをWRにして貰えたら、ブレイディ様でなくとも僕でもパスを決められるような気がします。

レジェンドWRジェリー・ライスは守備全体の空いたスペースを察知してフリーになる名人でしたが、百戦百勝くらいで対面したDBに「リリース勝ち」出来るのは歴史的に見てランディ、現役ではスティーヴ・スミス(ボルティモア・レイヴンズ)くらいではないかなと思います。

対面する選手との駆け引きや守備を読み取る能力の研鑽(ミーティングでは最前列に座ってノートをとりまくっていたとの事)を積み、それを実践出来るように黙々とトレーニングに取り組み続けたランディですが、晩年は若手選手の「師匠」的存在となったのも納得です。

フットボールの業界では"The Catch"という感じで歴史に残るようなプレーに"The○○"と名付ける慣習がありますが、このプレーはまさに"The Release"ですね。



【了】

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