2018年NFLドラフト LB(ラインバッカー)特集

2018年4月14日
2018年NFLドラフト注目選手シリーズですが、今回は守備の「司令塔」であるLB(ラインバッカー)の有望株の紹介になります。例年になくユニークな選手揃いでかなりのボリュームとなりましたので、しばしお付き合いの程を。


ボイシー州立大ブロンコス レイトン・ヴァンダー・エッシュ

Dr.FOOTBALLが最も注目しているのは、こちらのボイシー州立大ブロンコスのレイトン・ヴァンダー・エッシュ。たまたま観たフレズノ州立大との2017年マウンテン・ウエスト・カンファレンス決勝戦でのプレイぶりを目にして「ビビッと」くるものを感じました。

パシュート、タックル、パスカバー、ブリッツの全てにおいて高水準のパフォーマンスを披露。193cmに116kgのサイズも十分で、かつてシカゴ・ベアーズに在籍し今や伝説的存在となっているブライアン・アーラッカーを彷彿させる逸材です。アーラッカーしかりポール・ポズラスニー(元ジャクソンヴィル・ジャガーズ他)やビル・ロマノウスキー(元デンヴァー・ブロンコス他)にハンター・ヒレンマイヤー(元シカゴ・ベアーズ)など、名字がジャージィのネームからはみ出しそうなくらい長いLBは成功するという通説(?)に乗っているのもイチ推しする理由であります。


ヴァージニア工科大ホーキーズ トレメイン・エドマンズ

NFLのスカウト陣がにわかに注目しているのが、ヴァージニア工科大ホーキーズのトレメイン・エドマンズ。

的確なパシュートとタックルでボールキャリアーを仕留める、いわゆる「ハンター」系LBであります。手足の長さを有しながら身体がしっかりしており、サイズ感についてはNFLでのプレイに耐え得るように感じます。パスカバーに関しては未知数なので、レシーバーを背負った状態でキッチリ仕事が出来るトコロを証明して欲しいものです。


ジョージア大ブルドッグス ロクアン・スミス

続きまして、全米王座決定戦まで駒を進めたジョージア大ブルドッグスを守備面で牽引したロクアン・スミス。

ボールキャリアを捕らえた後に捻りながら倒す「ラップ&スクイーズ」のテクニックを、殆どのタックルで体現している教科書のような選手であります。ブロッカーの巧みな処理や力強いブリッツそして高いパスカバー能力の上に、チームのモチベーションを上げるリーダーシップも持ち合わせているとの事。NFLでも即戦力になるのは間違いなく、かつてサンフランシスコ・49ersの大黒柱だったパトリック・ウィリスぐらいの選手に成長すると個人的にニラんでいます。


アラバマ大クリムゾンタイド ラシャーン・エヴァンス

毎年のように守備選手を安定供給しているアラバマ大クリムゾンタイドより、ラシャーン・エヴァンスです。

2017年シーズンのミシシッピ州立大戦でアラバマ大守備ラインが相手攻撃ラインによって完全にコントロールされるという「非常事態」に際しても、僅かなパシュートのコースを見出してソロタックルをバシバシ決めていたのが非常に印象的でした。191cmと結構なサイズを持っているにも関わらずそれを感じさせないのは、アラバマ大守備ライン陣がいかに大きいかをうかがい知る事が出来ますね。彼に関しても、レシーバーを背負った時のパスカバー能力に今後の「出世」が決まるような気がします。


テキサス大ロングホーンズ マリク・ジェファーソン

名LBを多く輩出しているテキサス大ロングホーンズからは、こちらのマリク・ジェファーソン

パシュートが非常に正確で、現在のカンザスシティ・チーフス守備の中核を担っている同大の先輩デリック・ジョンソンからの伝統を継承する選手であります。ボールキャリアーに十分近づいてから思い切り刺し込む基本を徹底しているため、タックルミスが殆ど無いのもセールスポイントのひとつです。またまた、パスカバーがどれだけ上手く出来るかが今後の鍵になると思います。


アイオワ大ホークアイズ ジョーシィ・ジュール

Big Tenが戦国時代に突入したのは、近年アイオワ大ホークアイズが上位陣を苦しめるゲームを展開している事を一つの要因と挙げて良いでしょう。同大からカンファレンス最優秀守備選手に選出されたジョーシィ・ジュールも注目しておきたい一人です。

こちらの動画の冒頭のワイオミング大戦では、QBのドラフト有望株であるジョシュ・アレンをいわしまくっています。激アツな内容であった2017年シーズンのオハイオ州立大戦やペンシルヴァニア州立大戦においても、ジュールは鮮烈なインパクトを残しました。豊富な運動量を活かしてボールキャリアーを追っかけてブチかます、観ていて気持ちの良いタイプの選手ですね。


中央フロリダ大ナイツ シャキーム・グリフィン

2017年は無敗のパーフェクトシーズンとなり一躍注目を集めた中央フロリダ大ナイツからは、左手首から下の欠損というハンディをものともせず1部校の先発を務め多くのメディアにも取り上げられたシャキーム・グリフィン。

プレイの特徴はブリッツを仕掛けるのが非常に上手く、最後までボールキャリアーを追いかけてボールを奪おうとする意識が非常に素晴らしいです。またパスカバーにもセンスが感じられ、飛んできたパスやファンブルのフリーボールについても上手く処理しています。「健常者」と「障がい者」の垣根を取っ払って際立った活躍を見せてくれる、まさに「究極」のアスリート。彼の姿を目にすれば、五体が揃っている人間にとって言い訳する余地は完全に無くなりますね。


アイオワ州立大サイクロンズ ジョエル・ラニング

2017年シーズンはBig 12 カンファレンスにニックネーム通り「嵐」を巻き起こしたアイオワ州立大サイクロンズより、ジョエル・ラニングがラストバッターとなります。

Source:Iowa State Football: Joel Lanning on YouTube.com

 

 

ラニングについて最も驚きなのが、前年までプレイしていたのは何とQBのポジションという事実。他競技で例えるとピッチャーからキャッチャーまたはセンターフォワードからゴールキーパーくらい難度の高いコンバートでありますが、彼の運動能力を見込んだマット・キャンベルHC(ヘッドコーチ)たっての願いで実現しました。そんな無茶ブリにも関わらず短期間で先発の座を勝ち取り、あのベイカー・メイフィールド擁するオクラホマ大に土をつけたゲームで大活躍。その勢いに乗ってNFL入りにも挑戦するようですが、さてラニングの「ストーリー」は続くのか…注目する価値はあると思います。


タックル技術の進化とその潮流。

各メディアでは2018年ドラフトではQBの「当たり年」と取り上げられていますが、相対するLBもなかなかの逸材が揃っているように感じます。攻守それぞれの軸となるポジションゆえ、一方のクォリティが向上するともう一方のそれも引き上げられる相関性が存在するのかも知れません。

今回たくさんの守備選手を観察して、タックル技術の過渡期に突入しているようにも感じました。従来のボールキャリアーを「貫く」意識のタックルが見られながらも、プロレス技のパワーボムのようなフィニッシュとなる「担ぐ」タックルをする選手もかなり増えています。これは、ボールキャリアーがハードルジャンプで守備選手をかわす「トレンド」がタックル技術に影響を与えているように思えました。いずれにしても、こうした技術の「多様性」は観戦を面白くするだけでなく競技自体の活性化にも欠かせない要素となるのではないでしょうか。

それでは最後に「担ぐ」タックルのイメージで締め括りたいと思います。

[了]


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