2017年CFB注目QB vol.6 アラバマ大クリムゾンタイド ジェレン・ハーツ

2017年11月5日
今回お届けする2017年シーズンCFB(カレッジフットボール)注目QB(クォーターバック)は「マッチョ系」より、今シーズンも横綱っぷりが変わらないアラバマ大クリムゾンタイドの二年生ジェレン・ハーツになります。ファンブルロストのほろ苦デビューを吹っ切って立て直した2016年シーズン開幕戦から、フットボール史に残る名勝負となった全米王座決定戦までの好プレイを余すことなく集めたハイライトをまずはどうぞ。

プレイ内容とは全く関係ありませんが、ヘルメット越しの目の感じが1990年代に人気バンドだったWANDSのヴォーカリストの上杉昇さんっぽく感じるのは僕だけでしょうか…個人的には代表曲『世界が終わるまでは…』をBGMに視聴して頂きたいトコロです。


さて、ハーツが「マッチョ系」にカテゴライズされる理由についてはこちらの動画で納得頂けるかと思います。

日本人からしてもベンチプレスの275ポンド(約123kg)はそこそこといった感じですが、スクワットの500ポンド(約225kg)とデッドリフトの560ポンド(約258kg)に関しては恐れ入ります…としか言いようがありません。

正直フットボールのセンスが卓越しているとは言い難いタイプですが、フィジカルなプレイで局面を打開する事によりハーツは一年生から現在まで先発QBの座を守り通してきました。日本でプレイするQB諸氏も行き詰まりを感じられた際には、自身のストレングスの見直しをされると道が開けるかも知れませんよ。


2017年シーズンにおいてもフィジカルを基軸としたハーツのパフォーマンスは安定感そのままで、大接戦となった全米王座決定戦を経験した事により貫禄すら漂ってきたような気がします。

こちらのSEC(サウスイースタン・カンファレンス)中堅ながら強力な守備に定評があるテネシー大との対戦で、彼がゲームをコントロールしている様子をご確認下さい。それにしてもアラバマ大の攻守ラインを見た後では、他のカンファレンスの同ポジションが子供のように感じてしまいますね…

ある程度点差が開いた際に、こちらでも以前紹介させて頂いた「ハワイの怪童」一年生トゥア・タゴヴァイロアを登板させるのが今シーズンにおけるアラバマ大攻撃のお約束となっているようです。このゲームでも4ポゼッション差ついた時点で交代。"Pick 6"を喰らってしまう事もありましたが、投走ともに光るプレイを披露しています。

「天賦の才」という点では、こちらの「本格派左腕」の方が現エースであるハーツを上回っていると言って良いかも知れません。それゆえ、目下ハーツはこの「突き上げ」とも戦っていかなくてはならない状況に置かれています。肉体的な面に留まらず精神的な負荷にも耐え得る、真に「マッチョ」な選手-それがジェレン・ハーツなのです。


ジェレン・ハーツとアラバマ大の強さの源。

ところで近年ゲームをすれば大差で勝ってしまうアラバマ大の不安材料を敢えて挙げるとすれば、緊張感の欠如から足元をすくわれかねない事ではないでしょうか。過去の苦い経験もあってか、ニック・セイバンHC(ヘッドコーチ)はチームに対して常に危機感を持つように喚起しています。完膚なきまでミシシッピ大をフルボッコにしたゲーム後のインタビューにて、「選手が勘違いするからあまり褒めないでくれ、そういった甘言はネズミの駆除に使う毒饅頭みたいなものだ」とマスコミ陣に向けて発言したのは最たる例です。

強豪が文字通り「強豪」であり続けるためのスタンスを見ると、かつて常勝を誇った日本大学フェニックスのチーム作りが思い出されます。下級生QBに伸び伸びとプレイさせながら先発の上級生QBにプレッシャーを与えて成長を促し、実力差が歴然としている対戦にも点差のノルマを課して選手に油断する暇を一切与えず、甲子園ボウルで大勝しても日本一のタイトルを獲得するまで決して選手を褒める事なく緊張感の維持に努める…どうもここ最近、アラバマ大のサイドラインに立っているセイバンHCが故・篠竹幹夫監督に見えて仕方ありません。

[了]

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