マーク・デアントニオHC ミシガン州立大スパルタンズを率いる目下No.1の名将

2016年4月23日
プロアマと洋の東西を問わず、現在のフットボール界でNo.1の「名将」は?とたずねられたならば、目下ミシガン州立大スパルタンズを率いるマーク・デアントニオHCの名前を真っ先に挙げたいと思います。

ミシガン州立大を強豪校へと変貌させた、デアントニオHC

かつてミシガン州立大は所属するBIG TENカンファレンスで長らく低迷が続いていましたが、2007年のデアントニオHC就任以来は三度もカンファレンス王座に就く常勝チームへと変貌を遂げました。

リクルーティングにおいて遅れを取っているにも関わらずアラバマ大やオハイオ州立大などの全米屈指の強豪校と肩を並べているのは、勤勉な選手を集めて育成するプログラムを貫いている事にその秘訣があるようです。

そんな教え子達の中から、ワシントン・レッドスキンズのエースQBカーク・カズンズを始め、派手さはないものの安定した働きを見せているNFL選手も輩出しています。年俸はアラバマ大ニック・セイバンHCの半分とちょっと(それでも四億円近く貰っているという…)でありますが、その手腕は間違いなく「本物」です。

とにかく紙幣の肖像になりそうな立派な顔をされており、特に「深い」眼差しは歴史上の人物に例えると周恩来のそれを彷彿させられます。スピーチやインタビューの時に発する声の方も聞き心地の良い「深い」トーンです。

こちらは、CFP準決勝であった2015年コットンボウルにてアラバマ大に完封負けを喫した直後のインタビューになります。

TV局との契約上「敗軍の将、多くを語らず」とは許されず、全米のお茶の間にフルボッコされた姿をさらされて内心穏やかではなかろうに、デアントニオHCはいつも通り理路整然と受け答えされております。ここにも「将」…いや「人間」としての大きな器を感じずにはいられませんでした。

Source:Mark Dantonio Talks Cotton Bowl Loss on YouTube.com

 

 

『Spartan Football All-Access』

こちらはミシガン州立大フットボールに所属する選手やコーチへのインタビュー、練習風景、そしてゲームのハイライトで構成されている『Spartan Football All-Access』になります。最近のマイブーム動画で、もし自分に息子がいるならばデアントニオHCの所に是非預けたいと思わせるような作りです。

この回は主力選手による座談会からのスタートですが、どの選手も真摯で成熟した「漢」の面構えをしています。しかも忘れてならないのは、彼等まだ大学生ですからね…

練習やトレーニングの施設には"THE GREEN JERSEY EARNED. NEVER GIVEN."(緑のジャージィ=ユニフォームは勝ち取るものであり、決して与えられるものではない)などの標語が貼られており、それらに従って取り組む選手の表情から「やらされている」感を見つけるのは至難の業です。まさに「スパルタン」のニックネームは伊達ではありません。
しかもミシガン州立大の主力選手は四年生が殆どで、これは学生生活の最後までデアントニオHCの下でプレーしたいと感じる選手が多い事の証になります。三年間のプレーでドラフトにエントリーしてしまう等、プロの予備校と化しているため色々な問題をはらんでいる昨今のカレッジフットボールとは、一線を画す世界がここにあるといっても良いのではないでしょうか。
大衆にPRする言動や出版物などではなく、育て上げた人物達を見ればその指導者の力量が分かる…本当にその好例だと思います。

2015年、BIG TEN優勝決定戦を追った『Spartan Football All-Access』

お次は2015年シーズンのBIG TEN優勝決定戦を追った回をどうぞ。試合前の緊迫感、そして試合後の歓喜を画面越しからでも体感出来る構成になっています。最後の決勝TDに関して言えば、フットボール全カテゴリーを通じたプレー・オブ・ザ・シーズンにノミネートしたくなるくらいアツいです。
そして、デアントニオHCの「さあ、行こうか」という感じの合図で、スパルタ重装歩兵の如く選手達が密集して入場する様子はいつ見てもシビれます。

「金を遺(のこ)すは下、仕事を遺すは中、人を遺すは上」

デアントニオHCはお祖父さんの時代にイタリアから渡米してきた移民三世で、"D'Antonio"からアポストロフィを取って現在の苗字になったとの事です。古代ギリシアのスパルタ人はスラブ人の南下によりイタリア南部にあるシチリア島に落ちのびたそうで、ひょっとするとデアントニオHCもその血脈を受け継いでアメリカの地で「里帰り」を果たしたのかも知れませんね。

「金を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すは上」とはよく言ったもので、人間育成と戦績は基本的に正比例するのではないでしょうか。言わずと知れた我が国のフットボール名門校、関西学院大ファイターズも「人間力」の育成を重視している点で真の「ブランド」を築き上げているように思います。

関学の伝説的存在、武田建先生(僕の師匠の師匠なので、勝手に孫弟子を自称しておりますが…)は渡米された際にミシガン州立大で学ばれたそうです。このような所で「名門」の繋がりを感じるのも大変興味深いものです。

かなりの余談ですが、僕が初めてTVで観たローズボウルに出場していたBIG TEN代表もミシガン州立大。浅からぬ縁を感じつつ、名将デアントニオHC率いるスパルタンズの行軍を引き続き追っていきたいと思います。



[了]


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