デマルコ・マーリィとNFL歴代2000ヤードラッシャー

2014年12月15日
各メディアでも既に取り上げられている、NFLの2014年シーズンのリーディングラッシャーがほぼ当確となったダラス・カウボーイズRBデマルコ・マーリィですが、NFL史上七人しか達成していない年間2000ヤード獲得=2K達成まであと394ヤード(13試合消化現在)まで迫って参りました。現在のデマルコの勢いからすると達成は非現実的ではないように思えます。


そのデマルコの走りっぷりをどうぞ。

Source:Demarco Murray Highlights [M.V.P] – Go Cowboys on YouTube.com (記事紹介画像・動画ともに)

 

 

2014年リーディングラッシャー当確。 デマルコ・マーリィとエミット・スミス

以前のデマルコは、爆発的にたくさんの距離を走る試合があるかと思えば、QBのトニー・ロモと獲得距離が変わらないくらい走りが湿ってしまう事も多々ありました。得点圏で打てず、特大ソロホームランの山を築く打者みたいな感じでしょうか…今年はコンスタントに走り、カウボーイズの勝ち星稼ぎにかなり貢献しています。


僕自身、1990年代のカウボーイズ黄金期の屋台骨を支えた「フランチャイズ」RBであったエミット・スミスとデマルコを比較しがちでした。しかし"runner"としての資質はエミットをはるかに凌駕しており、やっとそれが今シーズン開花したようです。


参考までにエミットの現役時代の勇姿をどうぞ。

Source:Emmitt Smith Highlights on YouTube.com

 

ボールを持って走る事が超人的である"runner"タイプではなく、走り、パスキャッチ、ブロックが高いレベルでバランスのとれている"versatile"の代表格であります。走りの特徴に関しては、タックルを切るのが非常に上手であった事が挙げられます。多くのファンから愛されたキャラクターを有していたという点でも、まさに「フランチャイズ」RBでした。


この四十年間くらいの近代NFLにおいて、年間で2Kを達成(僕は大学一年の夏合宿遅刻の罰走にて二日間で達成しましたが…)したのはたったの七人。


そのひとりひとりにスポットを当ててみましょう。


O. J. シンプソン

O. J. シンプソン
(1973年バッファロー・ビルズにて2003ヤード獲得)

Source:OJ Simpson vs. Ohio State 1969 on YouTube.com

 

フィールド外での事件で知名度が高いのは遺憾ですが、"The Juice"(O. J.をもじったニックネーム)も当時では規格外の選手でした。さらに、NFLのレギュラーシーズンが2試合少ない14試合時代での達成である事も忘れてはなりません(1試合平均143ヤードはもちろん歴代最高)。こちらはUSCこと南カリフォルニア大時代の激走になります。そして、そのまんま東こと東国原英雄さんと瓜二つと感じるのは僕だけではないはずです。


エリック・ディッカーソン

エリック・ディッカーソン
(1984年ロサンゼルス・ラムズにて2105ヤード獲得)

Source:Eric Dickerson – Hall of Fame video on YouTube.com

 

2K達成者で最長距離を稼ぎ、未だその記録は破られていません。当時のコンディションならば現在のNFLでプレーしても相当走るのではないかと思われます。身体の大きさと高いアジリティを合わせ持った希有な存在でした。余談ですが、かつてワシントン・レッドスキンズで活躍したDEデクスター・マンリーとは従兄弟だそうです。


バリー・サンダース

バリー・サンダース
(1997年デトロイト・ライオンズにて2053ヤード獲得)

Source:Barry Sanders Highlights on YouTube.com

 

以前にもご紹介させて頂いた、ABS搭載の「超人」であります。全盛期に引退を表明して二度とNFLに戻ってこなかった事が、より伝説ぶりを高めています。それゆえ、1994年シーズンのワイルドカードであったグリーンベイ・パッカーズ戦にて獲得ヤードを一桁に抑えられた時はかなり衝撃でした。


テレル・デイヴィス

テレル・デイヴィス
(1998年デンヴァー・ブロンコスにて2008ヤード獲得)

Source:Terrell Davis Highlights on YouTube.com

 

2K達成とスーパーボウルMVPの二冠に輝く唯一の選手であります。膝に爆弾を抱えながらプレーした不知火型ランナーです。当時のブロンコスOLユニットの芸術的なゾーンブロッキングに伴って、走る姿が最も美しく感じられる選手でした。


ジャマール・ルイス

ジャマール・ルイス
(2003年ボルティモア・レイヴンズにて2066ヤード獲得)

Source:JAMAL LEWIS INSANE HIGHLIGHTS on YouTube.com

 

画面越しでもデカく感じますが、実際に見かけた方のお話によると「ハンパなく本当にデカい」との事でした…スーパーボウルでの活躍の勢いに乗って2K達成を果たしました。余談ですが、当時のレイヴンズはコーチと選手含めて「ルイス」姓が四人(他はレイ、マーヴィン、ジャーメイン)もいました。

クリス・ジョンソン

クリス・ジョンソン
(2009年テネシー・タイタンズにて2006ヤード獲得)

Source:Chris Johnson Highlights. on YouTube.com

 

"CJ2K"のニックネームでお馴染み、まだ現役でプレーしている選手であります。一線を抜けた後にブッチ切るスプリント能力は、歴代2K達成者でもNo.1のように思われます。現在はニューヨーク・ジェッツに籍を置いていますが、同僚であるクリス・アイボリーの役割と髪型が丸かぶりであるのは残念な気が…


エイドリアン・ピーターソン

エイドリアン・ピーターソン
(2012年ミネソタ・ヴァイキングスにて2097ヤード獲得)

Source:Adrian Peterson – Can’t Be Touched on YouTube.com

 

記憶に新しいもう一人の現役選手である"AP"ですが、今シーズンはプライベートの問題でプレーが出来なさそうなのは残念で仕方ありません。冒頭にお話したデマルコのオクラホマ大の先輩でもあります。同大への進学を決めたのは、キャンパスの脇にあるトレーニングに最適な坂道があったから…というエピソードも有名です。


将来の2K達成候補 ウィスコンシン大バジャースRBメルヴィン・ゴードン

2014年ハイズマン賞最終選考に残り、ネブラスカ大戦だけで408ヤード(!)を走りNCAA記録を打ち立てた、ウィスコンシン大バジャースRBメルヴィン・ゴードンの激走シーンをどうぞ。

Source:Melvin Gordon Ultimate Highlights HD on YouTube.com

 

こちらはNCAA記録を達成した時の模様です。それにしても、ウィスコンシン&ネブラスカ両校の試合はいつ見ても紅白戦にしか見えませんね…
とにかく脚が長く、膝もかなり上がる選手です。高いスプリント能力とアジリティを兼備しているのに加え、守備選手にとってタックルし辛そうなのが大きな特長だと思われます。タックルをハードル越えしてしまったのも実に見事ですよね。


「走り様は行き様である。」 RBというポジションの魅力について

こういったスターRBの華々しい活躍の裏で、NFLでのRBの平均稼働年数は3~4年と短い事実も忘れてはなりません。


サウスカロライナ大時代に膝を大怪我したにも関わらず、復帰後の期待を持ってサンフランシスコ・49ERSが獲得したマーカス・ラティモアですが、リハビリの甲斐なく先日引退を表明しました。こちらはラティモアが元気だった学生時代のハイライトになります。才能溢れる選手だっただけに非常に残念です…

RBという職業…その盛りが刹那的なものであるからこそ、多くの人々にとって彼等のプレーが実に美しく心に残るのではないでしょうか。



特にパス中心のスプレッド攻撃全盛期の昨今でありますが、かえってRBが走る価値は非常に高いものとなり、ゲームに大輪の花を咲かせているようにも感じます。
学生時代のRBの先輩がおっしゃっていた「こっちはタックルをガンガン受けて痛い思いするだけじゃなく大怪我して身体がダメになるかも知れないから、スポットライトが当たってもバチは当たらねぇだろう」という旨の言葉も思い出しました。


言わば夏の花火のような美しさと儚さを持ち合わせたような存在でしょうか、RBというポジションは。


ここで、花火をテーマにした曲で個人的にも大好きなMr.Childrenの『HANABI』をどうぞ。

Source:Mr.Children 「HANABI」LIVE on YouTube.com

 

曲を作られた桜井和寿さんは意図されていないと思われますが、何かを抱えながらも「もう一回」デカいのを打ち上げたいのは、全世界でプレーしているRBの皆さん共通に感じられている事と思います。


同じカテゴリーの記事一覧

ページのトップへ戻る