ドラフト・補強戦略から紐解くデンヴァー・ブロンコス、エルウェイGMが目指す王朝【前編】

2018年6月18日
2018年NFLドラフトが終了して早くも1ヶ月以上が経過しますが、ドラフトで指名されたルーキー達と今シーズンから加入した移籍組も「新天地」に馴染み始めた頃ではないでしょうか。

先のドラフトに関して言うとDr.FOOTBALLが最も指名に「本気度」を感じたのは、AFC西地区所属のデンヴァー・ブロンコスであります。今回はブロンコスの補強戦略について前編と後編に分けてお話させて頂きますので、暫しお付き合いの程を。



まずはブロンコスの2018年ドラフト全指名選手を一人ずつチェックしていきましょう。

〇一巡指名:ブラッドリー・チャブ(DE ノースカロライナ州立大)

この十年に一人の逸材はかなり早い段階で「抜ける」と予想していましたが、まさかブロンコスが指名するとは夢にも思いませんでした。ヴォン・ミラーというプレミアムなエッジラッシャーが既に在籍している上での獲得は、将棋に例えると飛車と角が二枚ずつ揃った時くらいの興奮状態をファンにもたらしたのではないでしょうか。この「ヴォン=チャブ」コンビの攻略は、相手チームの攻撃コーディネーターの頭に十円ハゲを作るくらい悩ましいものになるかと思います。


〇二巡指名:コートランド・サットン(WR 南メソジスト大)

以前にもお話した通りリリース、キャッチ、サイズに関しては申し分ありませんが、スピードの面ではNFLのトップクラスと比べると若干シンドいものがあるように感じます。スペシャルチームでの汎用性も高いとは言い難いので、早い段階でスクリメージプレイに投入して成長を促した方がベターかと。頼りになる既存のデマリアス・トーマスとエマニュエル・サンダースを両翼に据えて、スロットレシーバーとしての起用が望ましいように思います。


〇三巡指名:ロイス・フリーマン(RB オレゴン大)

今回のドラフトにてブロンコスは、かつてのダラス・カウボーイズにおけるエミット・スミスのような長期間稼働出来る「大黒柱」RBを獲得したと言って良いでしょう。三巡目でもかなり遅いと感じましたが、ブロンコスの英断には拍手喝采です。現在発表されているデプスチャートではデヴォンテ・ブッカーに次いで二番手に位置していますが、今シーズン中には間違いなく先発に抜擢される事でしょう。


三巡指名:アイザック・ヤイダム(CB ボストンカレッジ)

今年のドラフトでCBのポジションについては、ピーンとくる選手がいなかったというのが正直なトコロで彼の事もノーマークでした…いわゆる「シャットダウン・コーナー」という感じではなく、ゾーンカバーとランサポートを確実に遂行するタイプです。まあ「ハズレ」も多いポジションであるため、その点においては堅実な指名だったのかも知れません。


〇四巡指名:ジョーシィ・ジュール(LB アイオワ大)

ボールに対する鋭い嗅覚と豊富な運動量を武器に、食らいつくようなパシュートとパスカバーでフィールド所狭しと駆けまわる選手であります。自分より大きな攻撃ラインとのコンタクトにも負けない身体の強さと闘争心も申し分なし。守備のまとめ役を果たすLBが長らく不在だったブロンコスにおいて、この「火の玉ボーイ」は新たなリーダーシップをもたらしてくれる事でしょう。


四巡指名:デショーン・ハミルトン(WR ペンシルヴァニア州立大)

ペンステイトではRBセイクオン・バークリーとTEマイク・ゲーシッキの二大攻撃タレントの陰に隠れていましたが、なかなか良いレシーバーであります。サットンとは違ってスペシャルチームでの汎用性が高そうなのも期待出来るポイントです。それにしても、指名発表の時に現れるビキニ姿のマイルズ君が気になって仕方ありません…


〇五巡指名:トロイ・フーマガーリ(TE ウィスコンシン大)

ブロックが若干イマイチなのは分かっていましたが、五巡まで「抜け」ていなかった事にビックリしました。ブロンコスにとっては文字通り「バーゲン」だったと思います。リリースとキャッチに関してはプロレペルでも遜色ないのは御覧の通り。膝の治療のため昨2017年シーズンは稼働していなかった元オールアメリカンの貴公子ジェイク・ブットが計算出来ない状態なので、スクリメージプレイでの出番が早々に回ってくるかも知れません。


六巡指名:キーショーン・ビエリア(LB ワシントン大)

対ワシントン州立大攻撃のゲームハイライトをどうぞ。動きは良い選手ですがカレッジレベルでも攻撃ラインに「取り切られる」事が散見されるため、NFLの猛者ライン相手となると中々シンドいものがあるかも知れません。スペシャルチームから粘ってロスターに残り、シチュエーション限定でも良いのでスクリメージプレイでアピールする事が出来ればと思います。


六巡指名:サム・ジョーンズ(OG アリゾナ州立大)

個別のプレイ動画が見つからなかっため、対ワシントン大守備とのゲームハイライトを御覧下さい。左Gがジョーンズです。ゾーンブロッキングやパスプロテクションでの受け渡しなどのコンビネーションがスムーズなのは素晴らしいですが、守備ラインとのファーストヒットで刺し込まれる場面がチラホラ。NFLでOGとして定着するためにはファイタータイプである事が必須条件なので、ワン・オン・ワンの強化が今後の課題となるでしょう。


七巡指名:デイヴィッド・ウィリアムズ(RB アーカンソー大)

対ルイジアナ州立大守備のゲームハイライトをどうぞ。ブロッキングスキームをしっかり理解しているのか、攻撃ラインが空けた穴を見つけてそこに走り込むのが非常に上手い選手のように見受けられます。惜しくらむは、抜けた後に守備選手をぶっちぎるスプリント能力が欠けている事でしょうか。ショートヤードのシチュエーションならば活きる選手だと思うので、何とかロスター入りするように頑張って欲しいものです。


ドラフトの影の立役者は…?

今回のドラフトにおいてブロンコスの「本気度」を感じたのは、Dr.FOOTBALLが事前に紹介させて頂いた選手(名前の前に〇)を五人も指名してくれたという点だけではありません。ポジションの層が薄いからとかその年の目玉だからという単発的な発想からではなく、既存選手との「ハーモニー」を意識してチームをピルドアップする戦略がヒシヒシと伝わったからです。

リーグを代表するような選手が在籍しているポジションをさらに「アツく」する指名には驚かされましたが、恐らくドラフトにおけるマネジメントの殆どを行っていたのはこの人物に違いないでしょう。

かつてはデンヴァー・ブロンコスの先発QBを務めた「若大将」、今やチームを牛耳る…もとい統括する「将軍様」であるジョン・エルウェイGMその人です。エルウェイGMがどのような意図でチャンピオンチーム、いや「王朝」を築き上げようとしているのかについては、また次回お話させて頂きたいと思います。



[後編に続く]

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